「エシカル(ethical)」とは、「倫理的」「道徳的」という意味。倫理的、道徳的な消費は「正義」ブームにも乗っかって、ムーブメントを起こすだろうか。
日本コカ・コーラとローソンは、缶コーヒー「ジョージア グリーンプラネット」を約300万本発売している。この缶コーヒーは、CO2排出量の削減に貢献する商品として、両社が費用を負担している。消費者が缶コーヒー1本購入することで、500グラムのCO2排出量の削減に貢献できる仕組みだという。
松屋銀座では、クリスマスケーキの販売と同時に銀座産の蜜ろうを使用したキャンドルを限定100台、チャリティ販売を行う。このキャンドルの売上の一部はNGO「ルーム・トゥ・リード」を通じて、途上国に寄付される。
オイシックスはすでに通販サイトでさまざまな寄付対象の商品を扱っているが、今回カボチャを追加した。これらの商品の売上げの一部は、「テーブル・フォー・ツー」という途上国への食料寄付を行う組織を通じて寄付される。
商品価格が通常よりも高いにも関わらず、販売量は寄付つきのほうが多いという。
このオイシックスの例のように、商品の機能は変わらないのに、「社会貢献」の要素があることで、売上げが伸びるのが、エシカル消費の力だ。
人は本質的に「正しいことを行いたい」「弱者を助けたい」というマインドを持っているもの。こうした社会貢献を商品の持つ背景、ストーリーの中に組み込み、消費者、企業双方で、途上国貢献、弱者貢献、環境貢献に取り組むことのすばらしさは、誰にも否定できることではないし、昨今のマーケティングセオリーにおいても理にかなったアプローチだ。
しかし、考えと行動が結びつかない典型的なことでもある。たとえば似たような機能を持つ商品で、一方は人件費の安い国で大量に作られ徹底的にコストダウンを考えて作られた500円のもの、もう一方は、途上国支援の考えのもと技術指導や教育を含め、小ロット多品種生産で作られた1,000円の商品、どちらを買うべきかと尋ねれば、大半の人は1,000円の商品だと答えるだろう。
しかし、普段の生活の中で、どちらを選択するかとなると、購入機会、チャネルがないということを差し引いても、ほとんどの場合、逆の結果になるのではないか。
選挙の前に世論調査を行って「選挙に行くか」と聞けば、8割近くの人が「必ず行く」と答えるのにも似ている。実際は5割の人しか行かない。
商品、サービスの機能だけではなく、社会貢献まで付加価値として提案しないと消費者に受け入れられないとは難しい時代になったものだが、企業の存在自体の意味を考えれば本来あるべき姿はこういったところにあるのかもしれない。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24