先週末くらいから、自動掃除機「ルンバ」の新しいCMが流れるようになりました。「赤ちゃん篇」と「夫婦篇」の2バージョンありますが、いずれも『お掃除するのは、ルンバの仕事。○○するのは、あなたの仕事』というのがキャッチコピー。“便利家電”から“時短家電”へのステップアップを図るルンバ、気になります。
ルンバを開発した米国アイロボット社とは
ここでもう一つ、ルンバを開発した米国「アイロボット社」のことについて、少しご紹介したいと思います。アイロボット社は、マサチューセッツ工科大学の研究者らによって設立された会社で、今年創立20周年を迎えました。それを記念して、今年10月には、同社のCEOであるコリン・アングル氏が来日、外国人記者クラブで会見を行っています。
私も出席しましたが、ここでの話でとても興味深かったのが、日本人は「ロボットというと二足歩行のものを考え、かっこいいものを作りたいと考えてしまうが、ロボットとは人間が必要としている作業をしてくれるものであり、研究やデモンストレーションだけでなく、売れるものを作って商品化しなければ意味がない」というものでした。
この20年の間に失敗を重ねながらも14のロボットを作り、ビジネスモデルを構築してきたアイロボット社ですが、現在北米の200ドル以上のクリーナー市場のうち、10%のシェアをルンバが占めるまでに成長してきたとのこと。「イスにぶつかってひっくり返ってしまう」「コードに絡まってしまって困る」というような、課題を解決しながら、消費者の役に立つ知能を持ったものにバージョンアップしてきたことが多くの支持を集めたのだと力説していました。研究者やロボット愛好家のものではなく、実際に使えるロボットでなければならないのだと。
また、「ハード、センサー、ソフト」の3つが重要なキーワードだが、これからのロボットはソフトウェアの開発に重点が置かれるだろうとも。
高性能な人工知能をあらためてアピールした意味
アイロボット社は、軍事用の多目的作業ロボット「パックロボット」を作っており、爆弾処理などでも活躍しています。こうした技術や人工知能が自動掃除機ルンバにも生かされているのは、周知の事実。部屋中をくまなく、しかもエネルギー効率のよい掃除の仕方で行うという実力の裏付けにもなっています。
10月の外国人記者クラブでの会見も、便利な自動掃除機として認知度がかなり高まったルンバを、今一度技術の側面から見てもらうことで性能の高さをアピールするものだったのではないでしょうか。
最後に、再びCMの話に戻りますが、子育て世代や共働き家庭に照準を当てた“時短家電”という位置づけも大変興味がありますが、私個人としては、今後シニア層や介護をしている人のいる家庭にも広めてほしいと思っています。腰をかがめたり、重い掃除機を引っ張って掃除機をかけるのが辛いという人たちにとって、ボタンを押すだけで掃除をしてくれるのは本当にありがたいことのはず。介護に追われる人にとっても、掃除の手間をルンバが引き受けてくれたら、どんなに助かることでしょう。
でも、まずは30~40代の人たちに積極的に使ってもらい、それを見た“親世代”に広まっていく…という流れのほうが自然なのかもしれませんね。
2002年に日本に登場しながらも、一度消えかかっていたルンバに脚光を当て、時間をかけて広げてきた日本正規総代理店「セールス・オンデマンド社」のマーケティング手腕には注目すべきものがあります。ルンバのさらなる人気上昇に火が付くでしょうか。期待がかかります。
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2015.07.10
2015.07.24
株式会社神原サリー事務所 代表取締役/顧客視点アドバイザー
新聞社勤務を経て、フリーランス・ライターに転身。マーケティング会社での企画・広報などを兼務した後、顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立し、2008年に株式会社神原サリー事務所を設立。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」ことをモットーに顧客視点でのマーケティングを提案している。