電子教科書の時代がやってくる

2010.11.09

ライフ・ソーシャル

電子教科書の時代がやってくる

今野 篤
株式会社経営教育研究所 代表取締役

米国アップル社iPadの出現は、一気に本の在り方を変えてしまうかもしれない。そして、いよいよ日本でも書籍デジタル化の波が襲う。それは電子教科書の誕生を示唆しているのか。

 一方、日本でも着々とその準備が進んでいる。全面改訂される来年度の小学校用教科書の5割で、電子黒板に対応した指導用デジタル教科書が発行される予定。現在の国語1教科から一気に主要4教科が、その対象となる。全国公立小中学校の電子黒板設置台数は、2009年は約3万5千台と2008年の3倍以上普及している。ちなみにお隣韓国では、来年から小中高で電子教科書、政府教科書先進化案をまとめている。

 日本における電子教科書の定義は、文科省の検定を経た教科書の内容をデジタル化した教材ソフト。電子黒板などに教科書のページを映し出し、文字や文章、写真などを拡大したり動かしたりできる。将来は教科書も含む電子端末を児童生徒一人ひとりが持ち、教師の電子端末とネットワーク化する方式の導入も検討されている。しかしそれには、なによりも教員のITリテラシー力向上が必要不可欠で、今後の対策が急務である。

 電子教科書の導入に対して反対の声も決して小さくない。ノンフィクション作家の柳田邦男氏は、「学校教育のデジタル化 子どもの人格形成を阻害」などと題した文章を地方紙各紙に寄稿。また、ジャーナリストの田原総一朗氏も、反対論者で「教育とはコミュニケーション能力や想像力を高めることです。電子教科書は検索で答えを引き出す事が出来、自己完結型になってしまいます。今の教育のまま電子教科書を導入すると教育の欠陥が助長される事になってしまいます」と、今の状態で電子教科書を導入することの弊害を説いた。その田原氏、「デジタル教育は日本を滅ぼす」(ポプラ社)と題する書籍を既に発売(*)。10月23日の産経新聞の世論調査では、「電子教科書導入に賛成」は2割台で「デジタル時代でも紙の教科書は必要」は9割超と手厳しい。

 反対意見はあるものの間違いなく電子教科書の時代はやって来る。しかし、政府の思惑通り2015年にすべての小中学生がデジタル教科書を持つためには、乗り越えなくてはならない壁がまだまだあるようだ。

(*)J-cast8月9日参照

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今野 篤

株式会社経営教育研究所 代表取締役

教育ビジネスのアナリスト/コンサルタント。専門はフランチャイズ(FC)とデジタル関連。個別指導FCやベンチャーなどの教育機関を経て、2009年に民間教育シンクタンク経営教育研究所を設立。教育と異業種を結ぶエデュイノベーションLLPパートナー。

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