カルビーが小売店運営に進出するワケは何だ?

2010.10.22

営業・マーケティング

カルビーが小売店運営に進出するワケは何だ?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 日経新聞10月21日企業2面に「カルビー、小売店運営 3年で15店、限定品など販売 ニーズ探り開発に活用」という3段19行の比較的小さな記事が掲載された。しかし、これは単なる「アンテナショップ開店」というだけでない、大きな動きが感じられる。

 カルビーが狙っているのは、「情報収集機能」だけではない。「情報発信機能」も重要視しているのは間違いない。
 アンテナショップに集まる、情報感度が高く、商品カテゴリに関心度が高い層は「口コミの中核」ともなる。mixiやFacebook、Twitter、もしくはBlogによる口コミ情報発信が期待できる。店内調理されるジャガイモメニューを通じて、カルビーの「原材料へのこだわり」も訴求されるであろうが、それが話題になれば、ブランドへの好感度が増すだろう。地域限定商品が話題になれば、当該地域の販売に機寄与するだけでなく、お土産需要も喚起されることになる。また、発売前商品が話題になれば、発売前の期待醸成というCM以上の告知効果も期待できる。そもそ、昨今はCMの注目度も低下していることから、口コミの期待が高まるのは当然だ。また、数多く発売される新商品を一つ一つCMに注力していくより、事前に口コミで話題になった商品に後追いでCM投下量を増やした方が効率的だ。

 もう1つ狙いがあるはずだ。それは、販売チャネル対策である。コンビニやスーパーなど、大手流通グループの店舗ではPB(プライベートブランド)商品が棚の占有率を高めている。自社商品がPB商品に棚を奪われる脅威にさらされている。棚を確保するためには、まずは消費者に購入してもらい、売れ筋から外れないことと、それ以前に、CMの投下によって「盛り上がり感」を出して、チャネルの仕入れ担当者にアピールすることだ。スナック菓子では、競合の湖池屋が阿部サダヲが演じる異色のCM、「コイケ先生」シリーズで「湖池屋のポテトチップス」を訴求している。それを追って、カルビーも女優・蒼井優、プロレス選手・タイガーマスク、お笑いコンビ・ジャルジャルらをキャラクターとして、ポテトチップスを食べる瞬間の表情をハイスピードカメラ(高速度カメラ)でとらえた「ハイスピード・パリ!」シリーズを放映している。いずれも新商品ではなく、」ポテトチップスという基本商品でブランドアピールをしているのは、チャネルへのアピールという側面が高いといえるだろう。

 CMでチャネルへのアピールはできても、前述の通り、昨今消費者のCMへの関心度低下は否めない。そこで、ネットでの口コミ拡大による消費者の指名買いに期待が高まる。
 15という店舗数は、単なるアンテナショップとしてはかなり大規模であるといえるだろう。ともすれば、数を多くすることは通常の販売チャネルのでの購入とカニバリ(共食い)を引き起こし、チャネルからの反発を起こしかねない。しかし、口コミの規模拡大を狙うのであれば、消費者の接触ポイントを拡大する必要がある。そのギリギリのラインが15店舗という判断なのではないだろうか。また、「京都」という都市は、修学旅行の若者を中心として主要ターゲット層と効率的に接触できる選択であるといえるだろう。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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