仕事ができないのに、偉そうに振舞う上司は多い。そうした上司に対し、部下はどのように対応すればいいいいのだろうか。今回の時事日想は、バカな上司をうまく操る方法を紹介する。 [吉田典史,Business Media 誠]
あれから、6~7年が経つ。個人事業主であるいまのわたしに役立っているのは資格ではない。また有識者の無責任な言論でもない。上司の対策を考え抜いたエネルギーとか、耐える心、不満をコントロールする力、さらには摩擦を避けつつ、自分の考えを通していくタフネスさなどである。何よりも、この上司の癖をよく観察したことが有益だった。
例えば、彼の言動を見ていると、部下が自分よりも目立ったり、役員から部下が評価されることが気に入らないのだ。実際、わたしが役員から褒められたときは、数日間、こちらのミスをあげつらっていた。そのとき、わたしが上司を立てると、満足そうな表情になる。それで、攻撃が止まる。
実に単純なのだ。筋金入りのお坊ちゃまであり、甘やかされてきたから、つねに自分が一番でないと気が済まない。部下としてはそれを見抜き、彼の自尊心を逆なでしなければいい。わたしはさらに彼を観察した。そのポイントは、喜怒哀楽に目をつけることだった。特にその変化である。
例えば、怒っていた後に機嫌がよくなるときがあった。その際、わたしは周囲の部下たちの行動に着眼した。すると、やはり、部下が彼を立てるようなことを言うと、怒りが収まるのだ。さらに喜んでいた後に怒り出すことがある。そのときも、部下たちの行動を観察した。これも想像どおりで、部下が彼よりも目立つような仕事をしたときにヒステリックになることが分かった。
お坊ちゃま上司はしたたかだった
このように観察を続け、Excelに上司の感情とその前後の状況などを少しずつ入力していった。空き時間にそれを見ていると、上司の言動には一定のパターンがあることが分かった。「怒り」「喜び」という感情が周期的に表れるのだ。例えば2~3日間、部下に怒り、4~5日目になると、部下を褒めたりする。さらにそれを1週間ほど続けると、また今度は怒り始める。
わたしはこのとき、察知した。上司は意識して部下の前で機嫌を悪くしたり、よくしたりしていたのである。つまり、部下を褒めてその気にさせる。しかし、それがあまりに長くなると、本人が思い上がるかもしれない。そこで一定期間の後、しかったりして押さえつける。この繰り返しで、部長としての求心力を確保しつつ、組織を動かそうとしていたように思えた。
彼は無能なお坊ちゃまではなく、実はしたたかな男だったのだ。ある役員が彼のことを「カメレオンみたいに変わり身が早く、要領のいい男」と言っていた。当初、その意味が分からなかったが、こうして上司の癖を観察すると、言わんとすることがよくつかめた。
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