「できる人ほど仕事が集中する」―――これは組織における仕事分布の法則である。そしてできる人・頑張る人ほどカラダを壊す。そんな中、組織には能天気に雇われ続ける人もいたりする。なら、いっそ能力や向上意欲などないほうがシアワセなのかもしれない……そんなことを考えてみる。
「high aimer」の不満足―――これは一種、健全なものだ。では、「more wanter」の不満足―――これは「欲張り」という一種の悪癖といっていいかもしれない。
そこで例題―――「現年収400万円じゃやってられないよ。20代のうちに2000万円稼ぐ仕事に就いてみせる!」という人間がいたら、彼(彼女)は、「high aimer」の不満足なのだろうか?それとも「more wanter」の不満足なのだろうか?
□4:「low aimer」とは誰のことだ!?
冒頭の山登りの例では、一応、Aさんを「low aimer」、Bさんを「high aimer」とした。だが、このとき私たちは、「5合目までで満足」としたAさんを意気地のない「low aimer」として揶揄できるだろうか?
high/lowは相対的なものである。Bさんが「high aimer」であるのは、あくまでAさんとの比較においてだ。では、エベレスト級の山にチャレンジする登山家から比べれば、Bさんはどうなのだろう。そうなればBさんだって「low aimer」なのだ。職場で向上意欲をもって頑張っている人でも、壮絶な人生の戦いをした歴史上の偉人から比べれば、やはり「low aimer」なのだ。
だから、私たちはAさんを一概に揶揄できないし、見下してもいけない。それどころか、Aさんは5合目からの帰り道で、道端に咲く一輪の花をじっと深く観ていたかもしれないのだ。山の喜びは、何も登頂だけにあるとは限らない。むしろ登頂ばかりを目指して、足元にある自然からの感動をすっ飛ばしているなら、それこそBさんは不幸人である。
□楽観主義でいこう!(能天気ではなく)
で、本記事の結論―――Aさんがいいとか、Bさんがいいとか、そんな小難しいことを考えず能天気にいこう! 能天気人はいつもの世も幸福だ。
……そう言いたいところだが、ひとつ訂正したほうがよいと思う。それは「能天気」を「楽観主義」に変えること。
能天気と楽観主義とでは含んでいることがまったく違う。フランスの哲学者アランが「楽観は意志に属する」と言ったとおり、楽観主義には物事をプラス思考で期待的に見ていきながら、どこかに「最終的にはこうするぞ」という意志がある。そのおおらかな意志があるからこそ、どんな状況にも強くいられる。
ところが、能天気というものは、意志のない気楽さである。根拠のない安逸といってもよい。だから最終的には自分に無責任な態度である。周囲の人に迷惑をかけることもしばしば起こる。
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2010.03.20
2015.12.13
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。