「できる人ほど仕事が集中する」―――これは組織における仕事分布の法則である。そしてできる人・頑張る人ほどカラダを壊す。そんな中、組織には能天気に雇われ続ける人もいたりする。なら、いっそ能力や向上意欲などないほうがシアワセなのかもしれない……そんなことを考えてみる。
□2:意味が満たされていれば幸福である
Aさんの満たされ度は10割。Bさんの満たされ度は5割―――だからAさんのほうが相対的に幸福ではないか、さきほどはそう考えた。しかし、この「満たされ度」は、目標に対し何合目までが達成されたかという物理的な尺度である。
だがここで尺度を変えて、意味的な満たされ度を考えるとどうだろう。Bさんは登山に対し登頂を目指すことに一番の意味を感じている。だから、それを決行した。たまたま悪天候で途中下山したが悔いはない。自分の見出した意味に対して10割の行動をとったBさんは、決して不幸ではないし、不機嫌になる必要もないのだ。
……さはさりとて、現実問題、人間というものは目に見えるもので満たされないと、ついつい幸福感は縮んでしまう悲しい性(さが)を負っている。ふもとに下り、リスクを負わなかった人間(=Aさん)がゆったりと温泉に浸かっている姿を見たBさんが、不機嫌になったのも無理はない。
□3:知足者富(足るを知る者は富んでいる)
さて今度は、栗拾いに行ったPさんとQさんの話をしよう。2人は1時間ほど山の中にいて栗拾いをし、Pさんは20個ほど採れたのでこれで十分だと思い、山から引き上げてきた。一方、Qさんは、タダなんだからもっともっとということで、さらに1時間拾い回り、結局50個集めてきた。「日が暮れなきゃ、もっと採れたのに」と悔しそうだ。
さて、この話において、Pさんは「low aimer」の満足で、Qさんは「high aimer」の不満足ということになるだろうか?
……いや違う。これは言ってみれば、 「modest wanter」(控えめな欲求者)の満足と「more wanter」(もっともっとの欲求者)の不満足 ととらえたほうがよさそうだ(*なお、“aimer”や“wanter”はここだけの造語で正式な英単語ではない)。そう、2人の「欲求の容れ物」の違いの話だ。
「modest wanter」が持つのは、ceramic pot(陶器)である。手で持てる大きさでしっかりと出来ていて、ときに器に満たしたものを他人に注いで分けてやることもできる。
一方、「more wanter」が持つのは、balloon bag(ゴム風船の袋)である。詰めても詰めてもどんどん膨らんでいくので満ちることをしらない。また、ところどころにすぐ穴が開いて中身が漏れ出すので、いつもそのことを神経質にみていなくてはならない。
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2010.03.20
2015.12.13
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。