最近注目の「脳科学」は実に面白い。かくも人間の脳とは繊細かつ複雑にして、こんなにも驚くべき働きをしているのかと興味は尽きない。 しかも、そんな貴重なものが自分の頭蓋骨の中にもちゃんと1つ入っているのだ。実は身近でもある。
コラムの主旨は解剖学から見た脳の働きから、環境問題を考えようという主旨なのだが、その中の「人の眠りと脳の働き」に関する記述が興味深い。
<寝ているとき、脳は休んでいると思われているが、実は休んでいない>のだという。
<わかりやすい比喩は図書館だ。朝、客が入って、昼間にたくさん本が読まれると、最後は本棚が空になって机の上に本が散らばる。夕方に閉館すると、こんどは司書たちが元の本棚の位置に本を戻す。朝と同じ状態まで本を戻せば、また図書館を開けられる。脳も同じようにしているから目を覚ますことができる。>
<人間は夜になると意識がなくなる。眠るというのは、脳のなかにたまったエントロピーを片付ける、脳の無秩序を元へ戻すという作業なのだ。>
<この脳の働きを裏付けている最大の証拠は、寝ていても起きていても、脳が使っているエネルギー量は変わらないということだ。>という。
これはかなり、エンタープライズサーチのシステムに似ている。
「クローリング・サーバ」というところに検索のプログラムが格納されているが、その横にある「インデキシング・サーバ」というものが重要な役割を果たす。
サーバ内に日々放り込まれるドキュメントを、クローラーがかき集め、各々にインデックスを付け、それを管理しているのがインデキシング・サーバだ。多くはその作業は夜間行われる。
人間の脳は、意識するとせざるに関わらず、昼間目にしたものや聞いたものを記憶し、溜め込んでいる。
また、思考し何らかの考えも蓄積する。
そうして、脳内のエントロピーは増大した状態で夜を迎え、眠る。眠りながら脳が働き、整理する。
インデキシングの働きに似ている。
■脳の情報整理に学ぶ「文書の廃棄プロセス」
養老氏の言葉にはないが、そこに注目すべきヒントを見つけた。人間の脳も、まさか、日中の全ての情報を整理しつつ、蓄積するということは、いかな「人間の脳が高い可能性を秘めている」といって無理だろう。
整理の過程で、情報の廃棄が行われているはずだ。即ち、忘却。
ナレッジマネジメントの世界で重要なのは、この「廃棄」のプロセスだ。
最近注目の「文書管理ソリューション」は文書の生成から廃棄までのプロセスを管理するものが多いが、エンタープライズサーチは高速性とスケーラビリティー(巨大なデータ量の処理能力)が高いため、ともするとこの廃棄プロセスが忘れられがちになる。
ナレッジマネジメントやエンタープライズサーチの活用でうまくいかない例が、「ため込めるだけ溜め込んで」というパターンだ。人間の脳はうまいことできているのだろう。
適度に捨てる(忘れる)ことでバランスを取っている。
「選択と集中」という言葉は便利だが、選択し、集中していらなくなったものを捨てるという概念がつい忘れられる。
余計なものを溜め込んでいてよいことはない。サーバであれば、ストレージの無駄だ。また、検索精度も落ちる。
脳の働きに学ぶところは大きそうだ。
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2007.10.10
2007.11.05
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。