日本は兵役のない幸せな国だ。であるなら、45歳を超えたら皆、サラリーマンを辞めなければならない国民制度をつくったらどうだろう。この国には、仕事に対し「豚のコミット」のできるたくましい人間が必要なのだ
私が従業員を雇う場合、「大企業で働いてきました。これこれこういう実績があります」という人と、「いったん独立しましたが、うまくいかずここで再起を図りたいです」という人と、どちらに魅力を感じるか?―――いわずもがな、後者である。自らの事業を自らのリスクで動かそうと試みた人間は、他人には言いきれない多くのことを内に刻んでいる。
だが実際このとき、私は彼を従業員にはしないだろう。事業主として彼を留まらせ、業務委託という形で彼に仕事を渡す。彼とは労使の関係ではなく、協業パートナーとして結び付きたいからだ。彼が事業主として仕事を再び軌道に乗せることができ、今度は私にプロジェクトをもってきてくれるまでになったらとてもうれしい。
* * *
冗談半分に言わせてもらえば、日本で45歳以上のサラリーマンを認めない法律をつくったらどうかと思う。もしくは、40代での退職金が最も高くなるよう制度を直すべきかもしれない(そして、20代30代にはもっと給料をあげよう)。40代後半からは、皆が、自分のビジネスを始める社会をつくりだすのだ。
サラリーマンを卒業して、もちろん会社を立ち上げてもいいし、個人自営業者・インディペンデント・コントラクター(独立請負業者)として自らの得意とする能力を売ってもいい。
要は、組織の中で安穏とぶら下がりを考えるのでなくて、自らの能力と意志でつくりだす商品・サービスを世間様に買っていただけるよう全人的に仕事に取り組む職業人(=事業侍・豚のコミットメント)に万人がなっていく社会だ。そうした潔くたくましい大人が増えればこの国は壮健になる。
自分の事業を持つ。事業主になる。―――これは誰しも人生に一度は経験すべきものだと声高に言いたい。それは貴重な挑戦機会となり、鍛錬機会となり、感動機会となるだろう。
* * *
今回の事業仕分けでも、官僚の天下りがずいぶん指摘された。サラリーマンにしがみつく年寄りの保身姿は醜い。
いや、有能な人間ならそのポストに就いてもいっこうにかまわない。就くのであれば、独立事業者として、コンサルタントにでも何にでもなって、受託契約を1年1年きちんと市場価格で結んでいけばよい。
「メンドリの参加」程度で、割高年俸と退職金の二重取り三重取りは許されない。潔く、社会良識をもった対価で、「豚のコミットをせよ」と言いたい。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2010.03.20
2015.12.13
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。