緑じゃない、大人だ!「アサヒ・グリーンコーラ」は何を狙う?

2010.04.28

営業・マーケティング

緑じゃない、大人だ!「アサヒ・グリーンコーラ」は何を狙う?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 ちょっと謎な商品が登場した。アサヒ飲料の「グリーンコーラ」だ。その狙いを考察してみたい。

 昨日発売なので、今日、コンビニの店頭などに配荷されるであろう「コカ・コーラ ゼロフリー」。<オトナが夜のリラックスしたひとときを楽しむための飲み物><糖分ゼロ、保存料ゼロ、合成香料ゼロに加えて、カフェインもゼロ(=カフェインフリー)>という商品の特徴だ。

 確かにコーラ飲料で独自性を出すのは難しい。
 UCC(上島珈琲)は1990年に米Wet Planet社からライセンスの供与を受けてジョルトコーラ(JOLT COLA)を生産・販売した。「カフェイン2倍」を売り物に、コカ・コーラのさわやかさとは異なるその強烈な味わいで独自の世界観を構築し、CMも北野武を起用し、「ジョルト党」という大キャンペーンを展開した。しかし、一部のコアなファン層を形成したものの、一般にはなかなか受け入れられず、95年に味をマイルド化した。そこからブランドとしての迷走が始まり、2001年についにその幕を閉じたのである。

 飲料メーカーがコーラ飲料に進出したい背景はよくわかる。
 現在、清涼飲料市場は長引く不景気の影響で、全体として縮小傾向にある。浄水器で代替できるミネラルウォーター、自分で淹れられる茶系飲料が縮小。かろうじて微増しているのが、自分で作れない炭酸飲料カテゴリーなのだ。中でも、カロリーゼロに人気が集まる一方、炭酸飲料カテゴリーの4割はコーラ飲料が占める。
 アサヒ飲料は炭酸カテゴリーの中では、透明炭酸飲料においてキリンレモンと人気を二分する三ツ矢サイダーを持っている。しかも、今月ようやく「大人のキリンレモン」で「ゼロ系」を上市したキリンに対し、「三ツ矢サイダー オールゼロ」のヒットなどでゼロ系には一歩リードをしている。次は「コーラ飲料に」という意図は考えられる。

 業界でのポジションが上位のプレイヤーが下位のプレイヤーの商品とそっくりの商品を上市したら、それは「同質化」という戦略である。既にヒットしている商品に対して、優れた開発力で差異のない商品を作り上げる。強力な販売力で配荷し、先行商品を駆逐するという力業だ。飲料では古くはポカリスェットに対するアクエリアスの例がある。
 しかし、下位のプレイヤーが上位の真似をすると、「模倣戦略」というものになる。
 リーダー企業に市場を作らせ、自らは販促を行わない。製品価格を少し落として、「安いから、こっちでもいいか!」と消費者に手にとってもらい買わせるのだ。いわば、落ち穂拾いの戦略。従来の「隠し子的コーラ製品」はまさに、模倣戦略の展開であったといえる。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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