社長車の中で社長から教わった「社長になるための条件」とは、何だったのか? 会社の社長にはならなくても良い。でも『自分の人生の社長』はめざしてほしい。
給料とはなんだ?
「とりあえず社員に、来月の給料をきちんと払えるようになることや」だった。
「なんや、そんなことですか」
と思わず発した言葉に、社長はピキッと反応した。社長は、人の言葉にとてもセンシティブな方である。かつご自分は完全な長嶋タイプ、直感的かつ感覚的な言葉遣いをされる方だった。
「給料をなめたらアカン。毎月毎月月末にキチンキチンと、ピシーッとみんなの給料揃えてやな、バシッと渡すのがどんだけ大変か、わかっとんのかいな。そもそも給料は、どうやってまかなうんや」
グッドタイミング! この質問は、ちょうど少し前に自分でも考えたばかりである。
「僕はまだぺーぺーですけど、それぐらいわかりますわ。先輩の○○さんや△△さんとかが毎月、ごっつ売上したはりますやん。そこから給料が出るんでしょ」
「あんた、ええ大学出てる割に、あんまり頭よ〜ないなあ。勉強はちょっとぐらいできたかもしれんけれど、人生のことはスッポンポンや。そもそも○○の売上は多いけど、利益がどれぐらいか知ってるのか」
「利益って何ですか」
「早い話が儲けのことやないか」
「儲けるて、そんなアコギなことしたらあかんのと違うんですか」
「あほ言いなさんな。バチッと利益出さへんかったら、会社はペシャンや。資金繰りが回らんやないか。ほんでな、○○なんかは売上は多いけど利益率が低いねん。社長としては困っとんのや、ほんま」
といった間抜けな話に付き合っていただいた社長さんの度量の大きさには、今さらながら感謝する。が、このときの話をキッカケに、売上、利益そして給料の仕組みがおぼろげに見えてきた。
社長の視点を意識する
「キミもな、給料もろてるやろ。キミに給料を渡すためには、会社が利益を出さなあかんのや。どうやったら会社が利益を出せるんか、そんな難しいことをいきなり考え、いうても無理やろうから。こうしょう」
そして社長は、実におもしろい訓練を提案してくれた。
「あんたもな、新聞ぐらいは読むやろ。ほんまは日経がいちばんええのやけど、他の新聞でもええわ。経済欄と政治欄の記事をよう読むんや。ほんで、なんぼ世の中に疎いいうでも、得損の感覚はあるやろ。自分なりの感覚でええから、記事の内容が、うちにとって得になる話なんか、損することにつながるのか考えてみ。時々、キミの判断を聞いたるから」
これ以降、新聞を読むときに、ある基準を意識するようになった。問わず語りに教えてもらったのが社長の視点、すなわち経営者の視点である。イコール価値提供者(=対価受取者)の視点である。これは決定的に役に立った。
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