人事異動のシーズンになると「異動の回数が多い人が優秀、少ない人はダメ」といった話が出ることも。しかし、こうした風評は事実なのだろうか。今回の時事日想は、人事異動に詳しいコンサルタントの話を紹介しよう。 [吉田典史,Business Media 誠]
つまり、この会社の経営状態は、異動がスムーズにできる以前の段階なのだ。取材をしていると、多くの中小企業は売り上げや利益を安定的に捻出(ねんしゅつ)することすら、不十分であることがうかがえる。このあたりができていなくて、毎年、異動を行うことはやはりできないだろう。ただし、成長が著しいベンチャー企業は状況が違ってくる。前述の林さんは、ベンチャー企業については次のように答えていた。
「このような会社では大企業のような定期異動がなくとも、社員が自分たちの力で部署を大きくし、新たなポストを設けてもらえるようにしていくことができるでしょう。そのこと自体が異動のようなものであり、いまの停滞した企業が多い中ではすばらしいことではないでしょうか」
こう考えると、中小企業やベンチャー企業では「異動の回数が多い人は優秀で、少ない人はダメな人」と言い切ることはできない。だが、杉山さんの指摘するところの脈絡のない異動をしている人は、少なくとも「優秀な人」とは言えないだろう。
「異動の回数が多い人は優秀で、少ない人はダメな人?」と問われれば、私は次のように答える。
* 中堅・大企業:異動の回数が多い人は軌道には乗っているが、その中身が大切。脈絡のない異動や昇進が伴わない場合は、ダメな人。
* 中小企業:異動の回数が多く、しかも脈絡のない異動はダメな人。
* ベンチャー企業:「異動の回数が多い人は優秀で、少ない人はダメな人」と言い切ることはできない。ただし、脈絡のない異動はダメな人。
異動が多いか少ないか、といったことだけでその社員の優劣を判断することは難しいが、1つの判断基準になるだろう。異動のこの時期、自分や周囲を今回紹介したようなことをもとに密かに見つめ直してみるのはいかがだろうか。
【著書】
『非正社員から正社員になる!』(光文社)
『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)
『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)など。
【ブログ】「吉田典史の編集部」
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2010.04.12
2010.04.27