人事異動のシーズンになると「異動の回数が多い人が優秀、少ない人はダメ」といった話が出ることも。しかし、こうした風評は事実なのだろうか。今回の時事日想は、人事異動に詳しいコンサルタントの話を紹介しよう。 [吉田典史,Business Media 誠]
私が勤務した職場では、こうした部署は「姥(うば)捨て山」ならぬ、「ジジイ捨て山」と20~30代の社員たちに言われていた。今後は、40代のバブル世代で「軌道から外れている」社員がこの山に行くことになる。一部では、すでに始まっている。
チカラのある人に認められないと、昇進は難しい
次にHRMオフィス代表で特定社会保険労務士の杉山秀文さんに、話をうかがってみよう。杉山さんは大企業の人事部に20年以上在籍していたので、異動歴の観点から話をしてもらった。
「異動履歴を見ると、時々、脈絡のない異動をしている人がいる。例えば、営業部にいてその後、経理部に移り、今度はそれらとは業務の関連がさほどない部署に移ったりする。しかも、それぞれの在籍期間は1~2年とほかの社員よりもかなり短い。こういう場合は、その社員に何か問題があるのではないかと見ることができる」
つまり、異動の数が多ければその社員が「軌道に乗っている」とは言えない場合もあるのだ。私がこういう社員を観察していると、20代のころからその気配を漂わせている。特に会社員としての自覚に乏しいタイプが目立つ。例えば、上司に報告・連絡・相談をすることなく、1人で仕事を進めていく。それで悪びれたものがあまりない。こういう人は上司から追い出され、いくつかの部署を転々としていく。気の毒だが、30代になると早くも「軌道から外れた人」になるのかもしれない。
一方で、脈絡のある異動をする人。例えば、営業1部→2部→営業企画部と移り、一定のペースで昇進していく人には、おそらく支持者がいるのだろう。実力のある役職者(担当役員、本部長、部長など)の支持がなくて、こういう異動はまずできない。これこそが、この連載で何度か述べている「職場で生き抜くインフラ(基盤)」である(関連記事)。会社員は、組織の人である。組織の中で力のある人に認めらない限り、ほかの社員よりも早く昇進したり、活躍することは不可能なのだ。
中小・ベンチャー企業で優秀な人
さて、中小・ベンチャー企業であるが、こちらは全社員を対象とした定期的な異動をスムーズに行うことは難しいだろう。実際、経営者や役員にそのことを尋ねると、2人に1人は「ウチではできない」と認める。例えば、横浜市内に本社を構える企業(製造業・従業員数60人ほど、売上30億円)の経営者は、2年ほど前にこう答えていた。
「全員が1つの部署に5~6年以上は在籍し、ごくまれに問題がある人のみをほかの部署に移すぐらい。ほとんどの社員がこういうやり方に慣れ親しんでいる。ここで強引に定期異動を行うと、職場がぎくしゃくしてくる。私は異動は必要だと思っているが、いつも次の年への課題となっている」
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