「ポータブルスキル」を身につけさせれば社員の自律性は高まるのか?―――答えは「否」。自律性は知識・技能習得の問題ではない。働くマインドの構え様の問題である。習慣、文化の問題である。米・パタゴニア社にひとつの範をみる。
私はこれらの考え方をこそ多くの組織は真剣に取り込む必要があると思う。
(やり方は組織それぞれに適合したものがあるにちがいない)
組織・人事の世界では、ひところ、というか今でもなお、
社員のキャリアの自律性を高めるためには「ポータブルスキル」を身につけさせることだ
という考え方がなされる―――これは誤りだ。
「会社を越えて持ち運び可能なスキルを持てば、どこの会社でも雇ってもらえる=自律的」という解釈なのだろう。これは自律的という意味を矮小化している。
先の二番目にあげたとおり、自律性は、知識や技能の習得の問題ではない。
いくら知識を豊富に持っていても、いくら技能に長けていても、
・みずからの判断を下せない
・みずからの仕事をつくり出せない
・みずからのキャリアを拓いていけない働き手は多く存在する。
自律的であるとは、みずからの「律」(=規範・価値観)に基づいて
判断し、つくり出し、拓いていこうとする心(働くマインド)の構え様の問題なのだ。
自律性は心の構え様であるだけに、他人がテクニック的に教えることはできない。
本人がみずからの内に醸成するしかない。
他者ができるのは、その醸成の刺激づけや範を示すことである。
だから、自律性の強い組織からは、自律的な人財が育ち輩出する流れができる。
(逆に他律的な組織では、他律的な働き手が居つき、自律的な働き手は流出する)
そして自律を促す経営者の思想や理念は、そこに組織文化を生み、求心力を生む。
力強い個の力強い組織をつくるためには、まず「自律性」の涵養からはじめなくてはならない。
プロ野球監督としていくつものユニフォームを着た野村克也さんも次のように言う。
―――「しつけの目的は、自分で自分を支配する人間をつくること」
(『野村の流儀』より)
そのために、パタゴニア社のシュイナード社長は
「社員をサーフィンに行かせよう」という方法をとった。
さて、みなさんの組織では、どんな取り組み・仕掛けがなされているだろうか。
あるいは、組織の中心者は「自律性」ということに対し、どんな思想・理念を現場の一人一人に発しているだろうか。
(3月1日、日の出前の海。沖縄・恩納村にて)
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2010.03.20
2015.12.13
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。