欲望解剖:「水戸黄門」に見る偶有性

2007.04.07

営業・マーケティング

欲望解剖:「水戸黄門」に見る偶有性

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

脳が喜ぶことのひとつとして、快感を感じさせてくれる ドーパミン(脳内麻薬性物質)の放出がありますが、 もうひとつ脳が大好きなことがあります。 それは、 「偶有性」 と呼ばれるものです。

「偶有性」のテーマは、マインドリーディングでも以前一度取り上げました。

「先が読めないからうれしい」

偶有性は、半ば規則的、半ば偶然に起こる出来事のことです。

人は、物事の展開がすべてわかっていたら退屈になりますし、
かといって、展開がまったくわからないのは不安になるだけ。

半分分かっていて、半分分からない、
そんな世界が一番ワクワクできて楽しめるということでしょう。
(人生も、「偶有性」そのものですね・・・)

さて、

「欲望解剖」((茂木健一郎、田中洋、
 電通ニューロマーケティング研究会編、幻冬舎)

の中で、茂木健一郎氏は、

「偶有性」

を備えていることが人気の鍵となっている例として、

「水戸黄門」

を挙げています。

「水戸黄門」では、黄門さまが全国を旅する途中で
さまざまな事件に遭遇しますが、最後は、必ず

「この印籠が目に入らぬか!!」
「ははーっ」

で無事一件落着しますよね。

この印籠が「規則性」であり、
一話ごとに異なる事件(ストーリー)が「偶然性」です。

水戸黄門の「印籠」は、偉大なるワンパターンですが、
これが見ている人に安心感を与えると同時に、
黄門さまを移動させることでディテールに変化を与えています。

こうして、規則性と偶然性をうまく混ぜ合わせることで
面白さを作り出している。

だから、ついつい毎回見てしまう。
水戸黄門中毒になるというわけです。

考えてみれば、

「ウルトラマン」シリーズ
「仮面ライダー」シリーズ

なども、毎回、奇妙な怪物が登場してくるけれど、
最後には、決め技の光線やキックでやられて正義が勝つ
という点では、水戸黄門と同様、偶有性を備えていますね。

ある一定のパターンを維持しつつ、
ディテールを変えていくというのが、長く支持される
ロングセラー商品を生み出すポイントと考えることが
できるんじゃないでしょうか。

ちなみに、ご存知「スターウォーズ」は、
多くの神話に共通するパターンに基づいて制作されています。

それは、神話学者のジョゼフ・キャンベルが、
神話に共通するマザー(母型)として抽出した

「英雄伝説」

です。

具体的には、

「英雄は旅立ち、成し遂げ、生還する」

ということ。

つまり

・セパレーション(旅立ち)
・イニシエーション(試練)
・リターン(帰還)

という3ステップを踏むパターン。

日本のおとぎ話では、「桃太郎」が典型的ですよね。

スターウォーズが大ヒットし、長く愛される理由には、
やはり同シリーズが「偶有性」を備えていたから
なのかもしれません。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

フォロー フォローして松尾 順の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。