アマゾンのキンドルをはじめとして、電子書籍化の波がいよいよ日本にもやってくる。出版社はこの事態に備え、「日本電子書籍出版社協会」(仮称)を立ち上げるようだ。
大きく広がりそうなアマゾンのキンドルをはじめとした電子書籍市場にそなえ、大手出版社が団結し、「日本電子書籍出版社協会」(仮称)を設立し、流通市場の構築に向けて動いていく、と朝日新聞(1月13日朝刊)が報じている(これが正式な名称なら、すでにある日本電子出版協会となんともまぎらわしい)。アマゾンでは、すでに紙を含めた全体の35%以上が電子書籍だという報道もあり、日本で大きく広がるのも時間の問題だろう。また、紙からデジタル端末へ移行するという問題に加え、同新聞によると、現在電子書籍化の許諾権は著者にあり、紙書籍と電子書籍との間で、印税の競争になる可能性もあるという。
現在、出版社は、デジタル化、活字離れ、無料化の3つの大波にさらされ続けている。2009年の売上は2兆円を割るといわれ、売上ダウンに歯止めがかからない。まさに出版業界は冬の時代だ。売上の減少のみならともかく、発刊点数はここ20年で約2倍となっており、売上だけの問題なら工夫のしようもあるだろうが、原価は上がり、売上は下がるという二重苦に苛まれている。
とはいえ、デジタル化に全面参入することで、ばら色の将来かというと全くそんなことではない。ビジネスモデルという側面を見ると、元来、出版業界は革新的なモデルを行ってきた。インターネットといえば、さも革新的なビジネスモデルが存在するかのような錯覚を覚えるが、Yahoo!の井上社長が語るように、インターネットといえどもEコマースで売るか、ひとりひとりに課金するか、広告収入モデルにするかしかない。画期的な収益モデルがあるわけではないのだ。
出版業界はすでにこの3つの収益モデルはかつてからお得意のものだった。課金とはもちろん書店での個人への販売、広告収入は雑誌のビジネスモデルであり、さらに、情報誌を買って商品購入時にそれを見せれば安くなるなどといった複雑なモデルも開発してきた。あるいは、現在ではあまり見なくなったが、かつて「ハイセンス絵本」など、通販雑誌として書店で販売するなど、販売チャネルとしても流通構築の一翼を担ってきた。ネットで行う収益モデルは、すでにやってきたものばかりだ。しかし、現在の出版業界ではどのモデルにしても業績は芳しくなく、書籍自体が売れなくなっている。一時は広告収入モデルの成功事例として飛ぶ鳥を落とす勢いだったリクルートのフリーペーパーも、現在は振るわない。そして通信販売の主導権は完全にインターネットだ。
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