10代の性と自殺に関する新聞記事を読みながら、私が感じたのは、最近の日本の教育は、「生きる力」を教育のお題目としながらも、「生きる」ということの具体的な意味や技術をほとんど問題にしていないことへの憤りであった。
しかし、それをカエルの子を鷹とか鷲にしようとして、「教育だ!」「教育だ!」と騒ぎ立て、「学力至上主義」に落とし込もうとしているのが、昨今の教育界なのである。
そんな学力獲得主義に踊らされることなく、子どもたちが、一人前の大人になるように考えていくことが何よりも大切だと思う。その一環として、佐賀県の試みを歓迎する。医師と教師で生きるということの根源である性について、どうかしっかり教えていただきたい。
また、自殺の増加は、日本社会の経済が落ち込み、不安定な時代となった結果だ。こんな時代にあっては、子ども達に生きることに対する基本的な構えを教えることが必要になっている。前述したように、今まで学校は、「生きる」ことについて正面から取り組んでは来なかった。
しかし、生きることに対して、親子が、あるいは日本社会自体が明確な目標や解答を持ち得なくなった現在、学校が、生きることの意味や技術に真正面に立って、教えることが必要となってきているのだ。
10代の自殺を食い止めるには、学校が子どもたちの心理的なセイフティーネットになり、他者との連帯をしっかり行えるスキルを学校で身につけさせることが、何より重要だ。
さらに学校では是非、子ども達のセルフ・エスティーム(自己重要感)を高めるための教育を行ってほしい。自己重要感を高めれば高めるほど、自殺は、食い止められるからだ。
人との関係性を先輩から後輩へと伝達していくシステムが変容した今、学校や地域がそれをしっかり教えて、子どもたちを社会に送り出すという新たな役割が求められているのだと痛感している。
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2015.07.17
2009.10.31
合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表
1961年、神奈川県横浜市生まれ。 現在、合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表。 NPO法人 ピースコミュニケーション研究所理事長。