母親の社会進出を妨げる「リスクをとらないリスク」

2009.11.11

ライフ・ソーシャル

母親の社会進出を妨げる「リスクをとらないリスク」

寺西 隆行
(株)Z会

「女性の社会進出を応援しよう!」 …とはいうものの、現実の障害を取り除こうと、日本社会全体が代替案を考えているか、ちょっと疑問です。 事例を2つ取り上げます。「実態」を知ることの大切さの参考になれば幸いです。

ほんとにそうですよね。

もう1つ例を出します。

保育園のお迎え要請は「児童が37度5分の体温になったら」としているところが多いです(少なくとも自分の周りは)。
加えて、昨今の新型インフルエンザの流行もあいまって、管理責任上、37度5分が「とても厳しい、守らなければならない条件」のようにしている保育園もあるようで…
そうなるとどうなるか。

僕の娘(2歳数ヶ月)は、環境によって、1度程度の体温の瞬間的上下はよくあります。
先日、朝の体温が36度5分だったので問題なく登園させたのですが、10時半に園から電話が。「37度6分なので今すぐきてください」。
注)うちの娘が体温の上下が激しいことは前にも伝えたことがあります。
もちろん妻は、仕事を泣く泣く切り上げてお迎えに。

そのまま小児科に行って体温を測ると、36度7分。
お医者さんからも「何を診ていいかわからない」と冗談で言われる始末(苦笑)。
#子育ての経験のある方はお分かりでしょうが、子どもってこんなもんなんですよね。

振り回されるのは、母親です。

もちろん、保育園としては、多くの子どもを管理しなければいけない責任もありますので、その子だけではなく、発熱の原因が風邪の場合、他の子にうつってしまうリスクも考えなければならず、どうしてもラインを厳しめにしなければいけない事情もよく、ほんとによくわかります。
しかし、子どもの体温の上下の実態が上記であれば、37度5分を超えた、という実態だけですべての子どもを一律に判断されると、母親にとってはとってもきつくなることもあるんです。

「一回園に、事情を話してみた方がいいですよ」とお医者さんから言われました。
以前も話したんですけど…今回はお医者さんのアドバイスもつけて、もう一度相談したいと思います。

上で挙げた2点は、母親が継続的に働き続けるのを妨げている事例になります。

だからそのこと自体がけしからん、というつもりはありません。
早ね早おき朝ごはん、という習慣が身につけば良いことですし、保育園にしても大切な責任がありますから。

ただ、リスク(前者は「子どもの発育に影響する」、後者は「子どもおよび周りの健康に影響する」リスク)を気にするが余り、「リスクをとらないリスク」が発生し、「女性がいつまでも働き続けられる環境を」という理想論の掛け声だけで終わり、現実がついてこない状況を発生させかねない事例であることを伝えたかったんです。

次のページそれを「母親の能力の足りなさ」に言及することがあったら...

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寺西 隆行

寺西 隆行

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文部科学省広報戦略アドバイザー 経済産業省「未来の教室」教育・広報アドバイザー 三島市GIGAスクール推進アドバイザー 等

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