「敵を知り、己を知らば、百戦危うからず」ではありませんが、疲れを吹き飛ばすためには「疲労」とは一体何であるかを理解する必要がある・・・ということで、前回は筋肉の疲労(筋疲労)についてエネルギー源の枯渇という側面から考察してみましたが、今回はまた別の視点から疲労について考察してみたいと思います。
しかしながら、脳内で分泌される物質を簡易的に測定する方法は一般化されておらず今後、更なる研究、開発が必要であるといえるでしょう。
ところで、疲労を感じる脳の領域については慢性疲労症候群患者を対象とした研究で神経伝達物質のグルタミン酸の合成が減少していることが示された前頭前野Bromann9/46d野と前帯状回が有力視されていますが、この前頭前野Bromann9/46d野は超機能領域とも呼ばれ、意欲と行動計画を司る中枢司令部として知られています。
一方、前帯状回は痛覚及び集中力や自律神経の調節を担っていることが知られていますが、疲労時に出現する「身体及び精神機能の減退」現象の多くは、これら前頭前野および前帯状回の機能低下時に観察される症状と共通しており、疲労発現のメカニズムに前頭前野及び前帯状回が大きく関与していることが示唆されています。
そして、前頭前野がダメージを受けると行動や決断を効率的に導くための短期的な一時記憶情報であるワーキングメモリに大きな障害を起こすことが報告されていますが、ワーキングメモリ課題を実施すると前頭前野(特に46野)の活動が高まることが確認されており、これらの実験結果は作業効率の低下に表出される精神疲労度を、前頭前野機能を反映するワーキングメモリで定量化できる可能性を示唆しています。
また、人間においては視覚から得られる情報量は膨大であり、その情報処理にはかなりの注意の配分と処理資源を要するといわれていますが、疲労が引き起こされると人間は処理しなければならない視覚情報量を減らすよう防御的かつ無意識に注意力視野を狭くすると考えられています。
これらのことから、疲労による前頭葉機能低下で情報処理能力の低下が起こり、注意力視野が狭くなることによって生じる探索反応時間の遅延が疲労(感)のマーカーの一つになり得る可能性が示唆されています。
ということで、疲労や疲労感についてはまだ分からないことだらけといっても過言ではない訳ですが、いずれにしても、疲れているときは業務効率が低下する可能性があるということになりますので、適度な休息を入れながら業務を遂行するようにしましょう。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.10.28
2009.10.29