日経新聞10月16日の16面に2つの記事が並んでいる。「百貨店6社が最終赤字」「百貨店アパレル4社2社減益、2社赤字」。百貨店の苦境は繰り返し報道されているが、その百貨店を主要な販路とする大手アパレル4社もレナウンとサンエー・インターナショナルは赤字。残る2社のオンワードと東京スタイルも9割減益という惨憺たる決算である。
■ファストファッションを脅かすユニクロ
バリューラインを下回ると、それは価格に対して価値が低いということになるため、当然消費者の支持が得られるなくなる。逆に、そのバリューラインを超える存在は、バリューライン上のプレイヤーに攻撃をかけられる。バリューライン上で棲み分けているファストファッション勢を脅かす一番の強敵は、言わずと知れたユニクロである。世界規模で見れば、例えばH&Mは売上げが1兆円越えでファーストリテイリングの倍であるが、ユニクロの卓越した品質へのこだわりはバリューラインの遥か上を行く。かつてはファッション性を高めることよりも品質を優先していたユニクロであるが、ジル・サンダーをデザイン監修に迎えるなど完全にファストファッションへの対抗姿勢を明確にしている。海外から進出してきたという珍しさが醒めたころ、ユニクロがファッション性をアピールして顧客層を切り取っていくかもしれない。
■ユニクロに次ぐ勝ち組「ポイント」
ユニクロに次ぐアパレルの勝ち組として、経済紙でもその社名をしばしば目にするようになった株式会社ポイント。同社の展開するブランドを7つ集めた複合店舗「コレクトポイント」が4月に明治通り沿いを渋谷方向に進んだ神宮前6丁目にオープンした。店内に入ると、ファストファッションの、特にフォエバー21、H&Mとの違いが大きく感じられる。ゆったりしているのである。天井が高い。商品が並べられているだけでなく、店内装飾がある。通路も広く、ゆっくりと買い物ができる。ふと、「ああ、洋服を買う時ってこんな感じだよな」と思う。ファストファッションの店舗では、「買い物」というよりは「補給」という感じでモノを買っているように人々が見えた。複数ブランドが同一店内にあるため、その幅広さも楽しい。価格はファストファッション価格である。品質はあくまでファストファッションのバリューライン上にあるのと変わらないと思う。しかし、本当に買い物の好きな人や、服が好きな人はこっちで買うだろうなとも思う。ポイントも海外ファストファッション勢から徐々に顧客を切り取って行くに違いないと思う。
■老舗の風格GAP
ラフォーレ原宿の前にはGAPがある。ファストファッション勢としてはとらえられていないが、H&Mやユニクロが採用しているSPA(製造小売り)という方式を最初に取り入れたのがGAPだ。コレクトポイント以上に店内はゆとりがある。価格は高くないが、品質はファストファッションのバリューラインを超えているように思える。そして何より、店内で初めて店員から声をかけられ、「接客」されたことに驚く。衣料品の購入時の接客には賛否両論あるが、ずっとファストファッションの店舗を見て、「品出し」だけに忙しく追われている店員を見ると、接客されるのも悪くないと思う。ある程度の年齢層より上には、ファストファッション店からGAPに来るとホッとする気分がするのではないだろうか。GAP回帰現象ももうしばらくすると見られるかもしれない。
今回は、あくまで主観的に原宿ファストファッション戦争といわれる現場を見て、今後を考えてみた。世は栄枯盛衰。かつての花形であった百貨店と高級アパレルブランドの低迷が示すように、大流行のファストファッションもやがては変化の波にさらされていくはずだ。その変化をものにするのだどんなプレーヤーか、目が離せない。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。