~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
いわゆるConfirmed L/Cというやつを要求するっちゅうことでん
な」
< コンファームド エルシー?? >
「宮田君、ええですか? ここは、我々は簡単に折れることない
よう、正念場という意識でいなあきまへん。
わてら日本側はイラニアン銀行の保証状をあきらめるということ
を徹底的にうまく交渉に使わなあきません。
何でかと言いますと、優良銀行であるイラニアン銀行をあきらめ
るちゅう譲歩をするということは、我々にとって、めっちゃ代金
回収リスクに影響が出るちゅうことでおます。
ということはですな。 それを盾にとって、いかなる値引きも一
切認めないという条件を合わせてカウンターオファーするべきで
おま。
< なるほど。 マイクの言う通りや >
宮田は、マイクのおっとりした、諭すような語り口から、これから
やるべきことが見えてきた。 さらに、マイクが彼自身のの仕事を
別に抱えてくれているにもかかわらず、自分の仕事に労力を存分に
注いでくれていたことに、心から感謝していた。
「おい、宮田!!」
突然マイクに替わり、関の大声が、受話器から鼓膜に飛んできた。
< で、出たー! またこのおっさんや・・・ >
「いいか! 宮田。
タイミングはお前に任す。
ところで、お前覚えているか?
昔お前が配属してすぐの頃だったと思うが、大森の後藤鉄工所
ってところに一緒にいったこと覚えているだろうが」
< あー、あの夜逃げした社長さんの会社・・・・。
銀行に徹底的に資産を差し押さえられていたあの会社・・>
関はさらに声を電話口で張り上げて、こう続けた。
「いいか、宮田!
日本であろうが、イランであろうがどこであろうが、お客様から
絶対取りっぱぐれないようにすることが何より大事なんだよ。
お前、イランに差し押さえになんかこれからも行きたいか?
行きたけりゃ何回だって行かせてやるよ。
行きたくなかろうが?
俺だってごめんこうむりたいね。
それでは、宮田。Good Luck!」
関は言いたいことを言うと宮田を敢えて突き放すように電話を
一方的に切った。
< おいおい、何がGood Luckや。ほんま。 このおっさん・・>
嵐のような電話を終えて、受話器を置いてふと思った。
宮田は、自分が関に電話で相談する前に、関とマイクは、もう既に
このイランの現地で起こっていることや宮田が相談しようと思って
直面しているであろう課題などを関とマイクがあらかじめ予想して、
すでに幾つかの関係部署と相当打ち合わせをし、さらには対策を見
出してくれていることにいたく感心している自分がいた。
こんな、日本から遠い異国にいると、本当に心強く、ありがたいと
思った。
まだまだ関やマイクにはかなわないと思った
ただ、最後に関の声を聞いたせいか、暫し忘れていた猛烈な下痢が
再び襲ってきた宮田は、トイレに一目散に駆け込んだのであった。
次号に続く。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
商社マン しんちゃん。 走る!
2009.10.28
2009.10.24
2009.10.16
2009.10.12
2009.10.11
2009.10.09
2009.10.03
2009.10.02
2009.10.01