「こんなにイイのにナゼ売れないの?」という思い、恐らく商品やサービスを開発した方なら一度や二度は経験されている「心の叫び」ではないだろうか。 しかし、「売れない」理由はある程度古典的なフレームワークで説明できる。
5.観察可能性…目に見えない効果ではなく、明らかに効率が上がるもしくは質が向上するなどの効果が観察・実感できること。
従来の燃焼式蚊取り線香に比べ、「ベープマット」は安全性と、燃焼時間。煙が出ないという点において、明らかな優位性があった。
にもかかわらず、全く売れなかった。
「こんなにイイのにナゼ売れないの?」という思いでいっぱいだっただろう。
ロジャースの論で考えてみる。
1.相対優位性…「2時間長く持って、明け方の蚊の猛攻も防げます」「煙が出なく幼児がいても安心です。辛くありません」「火を使わないので安全です」。確かに、その訴求されている内容は分かるだろう。
2.両立性…「蚊取り線香」を使っている家庭は、併用することはできる。この点も問題はないだろう。
3.複雑性…「化合物を使っている」などの説明はある程度、「ほう、そうか」という感じだろう。しかし、「だから何?」とう思いも生活者には大きかっただろう。「複雑性」をきちんとアピールするのは難しく、カンタンに伝えすぎてはありがたみがない。ここで勝負をかけるのは難しそうだ。
4.試行可能性…確かに「お試し」というプロモーションはなかったのだろう。しかし、さほど高い価格設定で上市していないはずで、明らかに蚊取り線香のシェアを奪取すべく、価格設定は「ペネトレーション」つまり利益率よりも短期でのシェア獲得を目指した低価格戦略を展開したと思われる。とすると、試行的に購入はなされても、肝心の「マット」の継続購入がなかったのが問題と考えられる。
5.観察可能性…さて、最大の問題はここである。当初発売された「マット」は電気で加熱しても無臭だったという。また、使用前、使用後の形態に変化はなかった。確かに「明け方の蚊に刺されない」という効用はあったかもしれないが、実際に刺されていたとしても明確にそれが明け方のものなのかは分からない。
上記「ベープマット」のケースは、フレームワークをロジャースが発表した前なので、フマキラーはこれに則ったわけではないが、見事な解決策が番組で紹介された。
解決策は以下の通り。
・本来無臭のマットに、加温した際に発するような臭いをつけた。
・マットに青い色をつけ、使用後にはそれが白くなるようにした。(蚊取り線香の燃えかすをイメージか?)
つまり、「観察可能性」に最大の問題があるとフマキラーは見抜き、「効いていると思えるように臭いをつける」「使った結果(落ちている蚊の姿)はマットが頑張った成果だと認識できるよう、使用後のマットが白く燃え尽きたようにする」という改良を加えたのだ。
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2007.12.27
2008.02.13
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。