企業の販売促進策として、商品の無料配付が盛んに行われている。最近の傾向は少量サンプルの「試供品」ではなく、商品現物を配付する太っ腹な企画が目につく。そんなんで採算会うの?と思う方も多いだろう。そこで、無料配付の成功の秘訣を考えてみたい。
しかし、購入頻度が低い商品でも無料配付での販売促進を実行している例もある。
昨日、9月17日に原宿でメガネの無料配付が行われた。配付数こそ1000個と先の例よりケタ一つ少ないが、原宿の明治通りに大行列ができ、その列は最長550メートルになったという。
配付されたのは度付きで4990円相当の商品だというが、メディアの報道によれば「タダだからカラフルな遊べる色のフレームを選んでもいいかも」といった消費者の声もあったという。(東京ウォーカー)その意見を考えれば、昨今メガネの使用者は一つのメガネをかけたきりでいるわけでなく、複数のメガネを掛け替える人も多いことから、無料で「遊べるメガネ」を一つ作らせて以後の反復購入を狙うとも解釈できる。しかし、この場合、あくまで知名度向上のためのイベントであると考えた方が自然だろう。
無料配付を行ったのはアイウェアショップ「JINS(ジンズ)」。旧社名は「JIN's GLOBAL STANDARD」。代官山の店舗など値段に似合わぬオシャレな店と品揃えと隠れた人気を誇っていたが、店名も変え、全国各地に多店舗展開をしていることから、ここは一つ、その名を知らしめる起爆剤が欲しいところだったといえるだろう。
今回のイベントは<イベント内容の告知は9/14(月)からWEBのみで行い、CMでは“原宿で何かが起こる”というWEBへの誘導のみ。たった3日間でこれだけの大行列となった。(東京ウォーカー)>という。
Web見て集まった人々が、無料配付のメガネを手にした後はBlogやSNSにその商品の感想を記すことは想像に難くない。つまり、一番の狙いは「ネット上でのクチコミ」であろう。
電通が提唱している態度変容モデル「AISAS」といいうものがある。A(Attention:注意喚起)→I(Interest:興味喚起)→S(Search:検索)→A(Action:購買)→S(Share:共有)と、ネットを中心とした購入前後の情報探索から共有までを表わしたモデルだ。ここで注目すべきは、ネット時代に消費者が何か気になった時にはまず「検索」して、その後、購入など何らかのアクションをした後には、ネットに書き込みをして情報をシェアする点である。メガネ無料配付はまさにこのモデルで設計されているように思われる。
上記の通り、無料配付は当然のことながら、配ればいいというものではない。どのような効果を期待して、どのように消費者を動かすか、AMTULなりAISASなりでしっかりと設計しておくことが重要なのである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。