広告不況や部数減などの影響で、取材経費を削減するメディアが増えてきているという。記者や編集者あがりの経営陣が考えていることといえば、“引き算経営”のことだけ。いずれやってくる人員削減に、記者や編集者はどのように対応すればいいのだろうか。[相場英雄,Business Media 誠]
もちろんこのコストを給与で賄えるはずもない。なのでペンネームで雑誌に連載を持つ、あるいは週刊誌記者の取材協力者として「業界事情通」やら「大手マスコミ記者」などの形でコメントを寄せ、これらのギャラで凌(しの)いだ。筆者の古巣のほか、経費に厳しかった一部の在京紙記者がこうした「アルバイト原稿」の数を競っていたのは業界では有名な話だ。
昨今の不況で出版社や新聞社、あるいはテレビ報道の現場が経費削減に恐れおののいているが、筆者が経験した自腹取材はすぐ目の前に迫っていることを若手記者、あるいは若手の編集者諸君に改めて自覚してもらいたいのだ。
前述した記事でも触れたが、経営センスゼロの各社トップたちが取る最初の行動は、手っ取り早い経費削減だ。既に残業代やタクシー代、備品に至るまでを減らせと言っているはず。取材にかかる飲食費などはもってのほかという事態は、すぐ目の前に迫っている。
だが、こうしたケチケチ作戦は現場の士気を下げるのみで、目立った効果を出せない。広告に依存し、左うちわでやってきた記者上がりの素人経営者に今般の難局を乗り切るのは所詮(しょせん)ムリなのだ。取材経費削減の次にくるのは、他の業界と比較して割高な水準に放置された人件費、つまり若い記者諸君の給与に他ならない。それでも業績が上向かなければ、人切りに発展する。従来、聖域とされてきた領域にメスが入るのは必至だ。
持ち出し取材で得るもの
ここまで、上から目線でネガティブな話ばかりをしてきたが、持ち出し取材は悪いことばかりではない。
まず、ネタに対する執着度が格段に上がる。自腹で取材するのだから、筋を読み違えたり、まして他社に抜かれたら相当にこたえるからだ。取材対象者にもこうした心構えは確実に伝わる。「真面目にやっている奴だから、ひとつ手助けしてやろうか」とネタ元との人間関係も好転するはずだ。筆者の場合、こうして距離を縮めたネタ元とは既に十数年のつきあいが続いているほか、家族ぐるみの関係になったことも少なくない。
自腹取材でネタ元とベタベタするつもりはない。そう感じる人も多いだろう。ただ、ネタを追っかけることが好きで記者、あるいはメディア業界に身を投じたならば、今回の大不況は会社の看板で仕事をしてきた姿勢を見つめ直す良い機会になるはずだ。それでもイヤだというのであれば、記者や編集者といった変な職業に執着する必要はない。他の職種をお勧めする次第だ。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.09.03
2009.09.08