広告不況や部数減などの影響で、取材経費を削減するメディアが増えてきているという。記者や編集者あがりの経営陣が考えていることといえば、“引き算経営”のことだけ。いずれやってくる人員削減に、記者や編集者はどのように対応すればいいのだろうか。[相場英雄,Business Media 誠]
以前執筆した記事で、巨額赤字を計上した大手マスコミ界の現状に触れた。「テメェごときが何様のつもりだ」といったお叱りをいただいたが、これくらいで凹む筆者ではない。今回は、巨額赤字の次にくるモノをテーマに考えてみたい。
次にくるモノとは、ずばり経費削減だ。元々メディア界の人件費や取材経費は割高だとみなされてきたが、いよいよこれが待ったなしで若い記者、あるいは編集者諸君を襲うことになる。経費削減、ひいてはその次にくる人的資源に対する刈り込みが始まったとき、キミは耐えられるだろうか。
巨額赤字で聖域にメス
「ウチの部署は黒字なんだけど、全社的な命令だからご理解のほどを」――。
過日、某大手出版社の編集者と新宿の安酒場で打ち合わせをしたときのこと。同社では幹部級の肩書きを持つ編集者がバツの悪そうな顔で筆者に告げた。
全社的な命令とは、創業以来の赤字転落に仰天した経営トップから発せられた経費削減のお達しを指す。従来使っていたレストランやバー、あるいはクラブでの打ち合わせが不可能となったので、単価の安い居酒屋でゴメン、というのが編集者のわびの背後にあった。
同編集者が所属する部署はヒット作連発の優良部署であり、経費に関してとやかく言われたことなどなかったというが、昨今の出版不況で従来比数%の経費削減が言い渡されたという。赤字部門ではこの比率がもっと高まるのだとか。
閑話休題。
筆者が以前在籍していた組織は、交通費以外の取材経費は実質ゼロだった。記者クラブ単位で経費をプールしていたこともあったが、ファンド管理者であるキャップに誰と飲んだか尋ねられるのがイヤで、利用したことはなかった。同僚にさえネタ元を明かしたくないという記者の習性に他ならない。
ネタを抜くにはカネがかかる。取材対象者を昼間のオフィスに訪ねても周囲の目を気にされ、スクープにつながる素材が出てくる確率は格段に低かった。そうなると酒席にネタ元を招き、ざっくばらんに話を聞くふりをしながら、スクープのタネを引き出すという手段に移行せざるを得なかったからだ。
大半の大手在京紙は、記者1人あたり月に数万円の経費が認められていた。しかし、筆者の古巣はこうした経費を出してくれなかった。必然的に居酒屋や馴染みの安スナックの支払いはすべて自腹だ。ひと月当たり10万円の出費は当たり前で、大きな案件にとりかかり、他社との競争が過熱した際などは、20 万円程度に達することすらあった。
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