日経MJ8月31日に掲載された2つの記事。同紙の編集者と編集委員の意見を読み解くと、「売れない時代」における製品開発担当マーケターの苦悩と問題点が見えてきた。
しかし、「消費者ニーズ」がわからず、「売る側の意志」が空回りしている状態が同紙の一面記事の一部から伺える。「家電量販6社仕入れのプロ予測」という記事で、「録画できるTV売れ筋大本命」「2位除菌・空気清浄機」など、少し景気のいい感じの見出しが躍る。
その中の囲み記事で2名の編集者がバイヤーの意見を伝えている。その一つで気になるのが「一般に上位モデルには、使わずに終わるような機能も目立つ。もっとシンプルで、なおかつ基本性能の高い製品が必要」とメーカーに「機能を絞れ」と注文を付けている。
家電だけでなく、昨今は携帯電話が使わない、ユーザーが使いこなせない機能満載の代表例ではないだろうか。一部の高級車も同様だ。
消費者の心が見えない。わからない。わからないので不安になって、なんでも付け加えてしまう。金やモノで心は買えないとわかっていても、その見えない心をつかみたくて異性に貢ぐ心境と同じといっては言いすぎだろうか。
ひたすら「足し算」することをやめて、そろそろ「引き算」でものを考えることも必要なのだ。
例えば、携帯電話の高度な機能を全て取り去って、一つだけ付け加えて欲しい付随機能を挙げるとしたら、筆者の場合「目覚まし機能」である。
メールとブラウジングは欠かせない。しかし、通話は待ち合わせの時や緊急時以外めったに使わない。通話記録を見れば、週に数回しか使っていない。それ以上に、毎日確実に使うのがアラームだ。だが、実際にはアラームを操作するのは結構階層が深くて使いにくい。ダイヤルにセキュリティーロックをかけていると、その解除をしてから操作することになる。うっかりマナーモードにしていると鳴らない。携帯本体の機能から独立して操作できる目覚まし機能。その話をすると、多くの人が賛同してくれる。
機能満載から、引き算をしまくって、ユーザーの不満解消をするちょっとした足し算を行う。そんなことも「売れない時代に売る」工夫として欠かせないのだろう。
「売れない時代に売る力」。それは、消費者に頼りすぎることでも、消費者のココロを忘れてひたすら機能追加することでも実現することはできない。マーケターの発想力と売る意志が今、売れない時代にこそ試されているのである。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。