マイクロソフトとヤフーの提携について考える

2009.09.01

IT・WEB

マイクロソフトとヤフーの提携について考える

泉 浩人

ご存じの方も多いと思いますが、先日、米国においてヤフーとマイクロソフトが、検索・広告分野における事業提携について交渉中であることを発表しました。この提携が日本のSEM市場に与える影響について考えてみたいと思います。

これを回避するためには、現在、日本でOvertureを利用している10万社以上とも言われる広告主について、登録キーワードや広告文、入札価格を含めた全てのデータを、AdCenterのプラットフォームに移管することが必要となりますが、これも、Overtureの新プラットフォーム(パナマ)への移行に要した時間やコスト、そして、それによって引き起こされた混乱、更に、今回は、これをYahoo! JAPANとMSという異なる会社の間で行わねばならないことなどを考えると、その困難は想像を絶するものがあります。

しかも、AdCenterの日本語向けの「ローカライズ」はこれからという状況ですし、カスタマーサポートなどの体制も一から作り上げるという状況で、Yahoo! JAPANが、検索連動型広告からの売上・利益を、日本において全く実績も経験もないAdCenterに託すというギャンブルに出るのかと考えると、今回の提携について、多くのネット系メディアが、おまけのように付けている「検索連動型広告のプラットフォームについてもAdCenterへの移行を検討か?」というコメントは、あまりに軽すぎるのではないかという気がしています。

とはいえ、もし、YSMについてもYST同様、Yahoo! Inc.からライセンスの供与を受け続けるためには、好むと好まざるをにかかわらず、AdCenterへの乗換を受け入れる以外にないのだとすれば、 Yahoo! JAPANとしては、大きなリスクを冒してでもAdCenterへの乗換を進めざるを得ない状況に追い込まれる日がくるのかもしれません。

ただ、その場合、日本は先進国の中で唯一、検索市場において、Yahoo!がGoogleを大きくリードしている国ですから、Yahoo! JAPANとしては、マイクロソフトとの、いわば「弱者連合」には加わらないという選択肢を検討する可能性もあるでしょう。

実際、広告については、YSMのライセンス依存からの脱却に向けて動き出しており、この7月をもって「コンテンツマッチ」の提供を中止し、いわゆる「コンテンツ連動型広告」については、Yahoo! JAPANが独自に開発した「インタレストマッチ」に一本化したのも、こうした動きの一つと見ることができると思います。

ただ、いずれにせよ、今回の提携について、正式に契約が締結されるのが来年初頭、そして合意した内容が実施に移されるまでには更に2年という非常に気の長い話ですので、その間に、マイクロソフト、ヤフーそして、日本の検索ビジネスに一体どのような変化が起きるのかを今から予想することは、非常に難しいことだけは確かでしょう。

(本記事は、弊社ブログ『SEM Knowledge Bank by Le Grand』に掲載されたエントリーを、一部、本サイトの読者向けに再編集して掲載しています。)

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