ご存じの方も多いと思いますが、先日、米国においてヤフーとマイクロソフトが、検索・広告分野における事業提携について交渉中であることを発表しました。この提携が日本のSEM市場に与える影響について考えてみたいと思います。
2. 日本のヤフーを支える米国ヤフーからのライセンス供与
一方で、ビジネスの現実的な側面を考えていくと、多少見方は変わってきます。
前述の通り、Yahoo! JAPANは、Yahoo!というブランドを使いながらも、経営的には、独立した日本の企業ではあるものの、そのビジネスの根幹を支える検索技術(YST)および、100%子会社化したOvertureを通じて提供している検索連動型広告のシステム(YSM)は、いずれも、Yahoo!, Inc.からライセンス供与を受けています。
つまり、ライセンスの供与元であるYahoo! Inc.が、自社の検索技術についてBingとの「統合(もしくは乗換?)」を進めるのであれば、Yahoo! JAPANとしては主体的にBingの採用を決めた訳ではないにしても、それは、実質的には、Yahoo! JAPANの検索結果がBingによってコントロールされることを意味します。
検索連動型広告のプラットフォームについては、更に話が複雑になります。
検索エンジンであれば、Yahoo! JAPANの「検索窓」に入力された検索クエリをBingのエンジンに飛ばせば済みますが、広告についてはそういう訳にはいきません。AdCenterと YSMのそれぞれに、利用登録をしている広告主がいて、かつ、それらの広告主がこれまでに登録・設定したキーワードや広告文、あるいは入札価格に関する情報に加え、これまでの掲載結果に関する膨大なデータの蓄積もあります。従って米国でも、両者の広告主の膨大なデータを統合するだけで数年がかりの作業になるのでは、という声も出ています。
ただ、欧米では、「両者を統合をしない」というオプションもあり得ます。(個人的には、こちらの方向に進む可能性が高いのではないかと思っています。)
つまり、YSMの広告主をAdCenterに移行・統合することはせず、Yahoo!は、単にAdCenterの広告配信先となって、Yahoo! (およびそれまでYSMの広告配信ネットワークに加わっていたサイト)には、YSMではなくAdCenterの広告が配信・表示されるようにしてしまうことも可能です。これまでYSMしか使っていなかった広告主も、AdCenterに登録・申込みをすれば、Yahoo!/MS双方の配信先に対して広告を表示することができます。
実際、今回の発表の中には、向こう5年間、マイクロソフトが、Yahoo!のサイト・ネットワークに配信した広告から得られた収入については、その 88%をYahoo!が受け取るという「破格」の条件も含まれています。Yahoo! CEOのCarol Bartzが提携発表の会見で、
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