新入社員の転職志向が高まっているという。 リテンションとは、優秀な社員を囲い込み、引き留めること。 キャリア開発支援の観点から若手社員のリテンション(引き留め策)の糸口を探る。
しかし、一歩間違えると「お説教」になってしまう。
外部講師として、受講者に信頼され、メッセージが伝わるためには以下の要素が求められる。
・キャリア開発についての専門性(これは当たり前)
・その会社や業界についてある程度の知識を持っている
・他の業界やビジネス全般についての知識と経験があり、視座の高さとビジネスセンスを持つ
・労働市場の動向、人事制度など組織側の視点からキャリア開発を捉えることができ、キャリアの市場価値を判断できる
・共感性と柔軟性の高さ
・講師自身が主体的なキャリアチェンジを経験しており、自律的にキャリアをマネジメントしている
・事例に多様性、リアリティ、迫力がある
若手社員が、社内で利害関係のない立場の年長者から社外の話を聞きたいと思うのは自然であろう。
なお、上記要素の一部は、社外講師のみならず社内スタッフにも求められるものである。
しかし、社外講師と社員との接点は研修という場面に限られてしまうことが多く、現実の仕事場面において、また、継続的に支援することは難しい状況といえよう。
次に、研修だけではなく、制度、しくみ、職場のマネジメントなどの観点からのリテンション施策を考えてみる。
研修後のフォローアップと受講者間のコミュニティー
研修や懇親会を通じて、受講者同士のコミュニティーが形成され、研修終了時には良いレベルで集団としての成熟度が高まる。
新入社員時とは違った感覚で新たな関係性が構築されることが多く、何よりも同期との結びつきを大切にする世代にとっては、受講者間での情報交換は研修後においても有効と思われる。
具体的に社員同士で1年ごとに振り返りの場や意見交換の場を設けることは理想であるが、業務多忙で物理的に集合することが難しい。
しかし、「現場で放っておかれる」ことは大きなリスクだ。
内定者や新入社員向けに使われるSNS、メーリングリスト、BBSなどを若手社員向けに転用することも有効と思われる。
また、定期的なフォローミーティングなど人事部、社内外の講師の参画も検討して継続的なモニタリングと動機付けの機会提供の場を設定することなども考えられる。
自社の人事制度、キャリアパスについての理解促進
リアルであれバーチャルであれ、受講者のコミュニティーにおいて流通させるべきコンテンツとして重要なのが、自社の人事制度、特にキャリアパスに対する情報である。
若手社員の閉塞感の要因のひとつとして、自分を取り巻く環境情報が不足しており、不理解となっていることが挙げられる。
「自律的キャリア形成」の前提として、最も身近な自社の制度や文化を理解することは絶対条件である。
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2008.10.18
2008.11.24
増田 崇行
株式会社クエストコンサルティング 代表取締役
2006年5月に株式会社クエストコンサルティングを設立しました。 組織人事領域におけるプロデューサーとして、クリエーターとのコラボレーションによりユニークなサービス、ビジネスを開花させてきました。今後も「Quest for the Human Brightness」をコンセプトとして、インパクトのあるサービスを開発しご提供することで、人と組織の本質的価値の向上に貢献できたらと考えています。