言いたいことをぎっちりと詰め込んで。そのためにデザインも工夫して。思いの丈のすべてを盛り込んだパンフレット、なのに結果的には、読んでもらいたい人に少しも届いていない。どうして?
エレベーターを探している人にとっては、どこにどんな階段がどれだけあるかなんてことはまったく不要な情報でしかない。いらない情報は必要な情報にとってのノイズとなる。その結果、本来求めている情報が手に入らない。とても不幸なことだと思う。
全部伝えたい、では結果的に、何も伝わらない
公式機関が出す構内図であれば、ありとあらゆる情報を盛り込まないといけないのも仕方がない側面はある。「なんで、これが載ってへんねん」と批判されることは避けなければならないからだ。あらゆる人に公平に、が公的機関の原則である。提供する情報に差をつけることは難しいという事情はわかる。
しかし、あらゆることをすべて伝えたいと思う気持ちはわかる反面、それでは読み手のことを考えていないのではないかとも考える。イニシアティブはあくまでも読み手にあるはずだ。であれば、読み手のニーズを考えて、そのニーズに応える内容なり、表現なりにフィットさせる必要があるだろう。
物質的に成熟化した今の日本社会ではメーカー志向の製品が受け入れられないのと同じく、文化的にも高いレベルにある日本では、あらゆる表現物についても表現者発想だけでは受け入れられない。言いたいことをすべて盛り込んだのでは、結果的には何も伝わらないリスクを抱えることになる。
とっても簡単、わかりにくいパンフレットの作り方
もうおわかりのように、わかりにくいパンフレットを作るのは実は極めて簡単なのだ。だからこそ、世の中にはわかりにくい印刷物が、これでもかというぐらいにばらまかれているわけだ。
自分の言いたいことを、受け手のことを考えずに、何もかもぎっちりと盛り込む。これだけでわかりにくいパンフレットはたちまち完成する。モノはなにもパンフレットに限る必要はない。ありとあらゆる表現物から、自分の語る言葉にしてからがそうである。
相手に伝わるかどうかを考えずに、自分の言いたいことだけを言う。これでわかりにくさはほぼ完成の域に達する。
であるなら、わかりやすくするためには、どうすればは言わずもがな。パンフレット然り、ウェブデザインまた然りである。いや、およそあらゆる表現物に、この真理は共通する。
最後に、いつも自分への戒めとして心にいつも意識していることばを一つ。
「伝えたいなら
伝わるように
伝えるべきだ」
極めて複雑なメトロ提供の大手町駅の構内図と
シンプルなえきペディアの大手町駅らくらくマップ
メトロの構内図では当然、都営の大手町駅は掲載されていない。
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