「トランジション」とは、節目、転機であり、キャリアの移行期のこと。 従業員が主体的に社内キャリアの転機を乗り越えるには?
ある年齢を境にラインマネジャーになるのか、プロフェッショナルになるのか、あるいは特定領域のスペシャリストになるのか、貢献のスタイルという選択肢(オプション)がいくつか用意されている。
しかし、これまでは組織がある日突然、「辞令」によって個人のキャリアを決めることが行われてきた。
いきなり選択を迫られても個人は困ってしまう。
そのようなリスクを回避するには、若年段階から「この会社でどんな可能性とキャリアパスがあるのか」という情報をしっかりと認識して、いくつかの選択肢とシナリオを考えておくことである。
節目の年齢でキャリアを考えてみる
そのような目的で、25歳前後にキャリア開発に対する一回目のオリエンテーション的な研修が盛んだ。
25歳で明確な社内キャリアは考えにくいが、将来を見たときに、たとえば「ウチの会社では35歳で昇進アセスメントがあって、自分でも選択しなければならないし、会社からも選別されるのだな」という自己認識を促すことで、キャリアに関する「自己選択、自己決定、自己責任」への第一歩が始まる。
生涯発達心理学の観点から見ても、ビジネスパーソンとしての約40年間には複数の節目があり、その節目には危機があるとされている。
危機を自律的に乗り越えるためには、マイルストーン(一里塚)となる内省の場が必要なのである。
前述のような25歳前後の意識づけ研修が最初の場となるが、次の場として注目されるのは35歳前後の研修である。
35歳前後の研修では、組織内における貢献領域(ドメイン)を決めて、自分固有の貢献スタイルを定めることをねらいとする。
自分の自由発想によるキャリアではなく、
「あなたはいま会社でどういう立場か」
「会社はどちらに向かっているか」
「従事する事業はどうなると思うか」
ということを考えさせていきながら、
「あなたはどの領域で何ができて、組織にどのように貢献するのですか」と受講者に問い掛ける。
要するに、所属組織内における「アイデンティティ」を明確にさせるわけであるが、これまで組織の異動命令に従ってきただけの個人には厳しい場となる。
このような場を経て、やがて来るべき「意思決定」に向けて準備状態を作ることがねらいというわけだ。
一般に、「35歳転職限界説」が言われるが、30代後半は所属組織で頑張るか、自分の意志で転職するという選択肢を考える最後のチャンスとなる場合が多い。
キャリアの市場価値も気力もないし、仕方なく今の会社に残るという人、
今の会社で将来の見通しが明るい人、
40歳からの活躍の場を違う会社に求めて卒業する人、
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2007.08.22
2008.02.17
増田 崇行
株式会社クエストコンサルティング 代表取締役
2006年5月に株式会社クエストコンサルティングを設立しました。 組織人事領域におけるプロデューサーとして、クリエーターとのコラボレーションによりユニークなサービス、ビジネスを開花させてきました。今後も「Quest for the Human Brightness」をコンセプトとして、インパクトのあるサービスを開発しご提供することで、人と組織の本質的価値の向上に貢献できたらと考えています。