ユニクロを傘下に持つファーストリテイリング社の「g.u.(ジーユー)」ブランドの戦略が加速している。その影で主力のユニクロを同社はどう動かすのか。
先の柳井社長の発言を読み解けば、ジーユーは最低価格で中ぐらいの価値を目指す「グッドバリュー戦略」であることがわかる。つまり、グループ内で見事なポートフォリオを組んでいるのだ。
しかし、さらに深読みすると、ジーユーの急速な店舗展開計画の影にはもう一つの意味があるように感じられる。
バリューラインの「価値」の軸は、外資のファストファッションブランドは明らかに「ファッション性」もしくは「デザイン性」である。その縫製や材質はお世辞にも高品質とは言い難い。
対してユニクロは品質には大手ナショナルブランドにも勝るとも劣らない。また、ヒートテックなどに代表される「機能性」という価値も付加されている。
もう一つ大きいのが、今年3月に発表されたデザイナーのジル・サンダーとの契約だ。彼女がユニクロ製品の全アイテムを監修し、いくつかのラインは自らデザインを手がけるという。明らかに「ファッション性」という価値も軸に加わるのだ。
中価格で、「品質・機能・ファッション性」という価値を実現するユニクロ。しかし、その価値を今まで同様の価格で提供する必要はあるのだろうか。
単純に全体を値上げをすれば、バリューライン上の「プレミアム戦略」になってしまい、旧来のアパレルメーカーと際はなくなってしまうのでそんなことはしないだろう。全体としての価格レンジは据え置き、既存商品より高単価・高利益率のアイテムをいくつか投入し、マージンミックスを図るという展開は十分考えられる。それが受容されれば、徐々に各アイテムの単価を引き上げていくことも考えられなくはないだろう。
価値を大きく高めたユニクロは、そろりと、微妙に商品の価格を引き上げる。多くの顧客は受容するだろう。しかし、価格に極めて敏感な層も存在する。それをすくい取るためにも、ジーユーはユニクロに追随する多店舗展開を目指さねばならないのだろうと推測できる。
ジーユーの低価格路線は市場に受容され、手応えを得た。その上で、ファーストリテイリングとしてのグループでの顧客囲い込みの意味も込めて店舗展開を加速する理由の一つがそれだろう。
多少価格が上昇したとしても、筆者としてはジル・サンダーが手がけた、あのシンプルながらも美しいラインの服をユニクロ価格で買えるなら、何とも幸せなことだろうと思う。
一方、ジーユーの990円ジーンズも見たが、確かに生地はずいぶん薄い気がしたが、価格を考えれば十分アリだろう。ジーユーのキャラクターである眞鍋かをりが自分のBlogで絶賛しているのもわかる気がする。
今後、ファーストリテイリンググループの戦略はどうなるのか。その時、市場の顧客層はどう動くのか。目が話せない状況だ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。