昨年の吹石一恵に続き、今年は栗山千明のCMが話題のユニクロ、ブラトップ。その販売目標数は、昨年3倍増の900万枚だという。その未曾有の大量販売攻勢にこそ、ユニクロの戦略の本質が隠されているのではないか。
■フェルミ推定で検証した真のターゲット数
筆者が聞いたネガティブなイメージを持つ、あくまで「美」を求める層がターゲット母数の3,280万人のうち、どの程度いるのか、ざっくり想定してみる。えいっと、三分の一がそれにあたるとしよう。1,093万人がターゲットから外れることになる。同様に、「どうしてもユニクロは好きになれない」という層も存在するだろう。そうすると、ターゲット年代からその層も除外しなくてなならない。同様に三分の一を除外しよう。729万人。そうすると、ターゲットは1,458万人となる。さらに、ユニクロは多店舗展開してはいるものの、とはいえ、近隣にユニクロがない層も出てこよう。それもざっくり、四分の一としてみよう。364万人がターゲットから外れる。ターゲットは1,094万人となる。
かなりざっくりした計算だが、フェルミ推定は、そのざっくり感がキモである。そして、国内で850万枚販売するためは、ターゲットの約1.3人に一人に買ってもらわねばならない計算になることがわかった。
■変わるユニクロ流の売り方
購入者数に限界があるのであれば、購入客あたりの購入数を上げればいい。実際に、ユニクロのWebサイトにあるブラトップユーザーの声では、何枚もまとめ買いしたという記述があったり、ユーザーアンケートの、ブラトップを何枚所有したいかという問いには、4枚以上とする回答が4割以上を占めている。
ブラトップは昨年3タイプの展開であったところを、今年、3倍近い8タイプでの展開となるという。カラーバリエーションも1アイテムで最大14色だという。幅広いバリエーションは、より多くの顧客を取り込むためだけではなく、より多くのアイテムを、一人の顧客に買わせるためのものであることもわかる。
ユニクロにとって、「まとめ買い」は売り方の基本である。しかし、その「まとめ」の意味する所の本質が大きく変容してきている。バブル崩壊後のアパレル冬の時代にロードサイドに展開して成長の基盤を築いたユニクロ。そのユーザーたちは、車で乗り付けて、広い店内を物色し、安価な衣料を物色して家族全員の衣料をまとめ買いするという購買行動であった。一カ所で、一度で買い物が済む。それが提供価値であった。
それが、今日ではヒートテックにしても、ブラトップにしても、顧客が商品を指名買いで複数購入していくのだ。「まとめ買い」の本質が大きく変わったのは明らかだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。