~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
関は、小柄だが大変元気で押しが強く、特徴的な彼の髪型は、恐らく
天然なのであろうと思われるパンチパーマ風で、両生え際が刈り上が
っており、かつ薄い色のついためがねをかけ、そのめがねの奥には、
眼光鋭い大きな目に、長いばさばさとしたまつげがあり、また、大き
な口から発する笑い声には威圧感があり、いかにも商社マンでならした、
といった風情をかもし出していた。
宮田が大学時代を過ごした北海道には見かけたことのないタイプの人
物像であった。
< いかにも柄悪そうなおっさんやな。
大阪でもここまで柄の悪そうなおっさんはおらへんで。
このおっさんとこれからずっと仕事していくんかいな。
いやー、これはほんま、かなわんなー >
「今から面白いところへ行く。
入社して早々の仕事としては、なかなかいい体験が出来るぞ。
すぐ支度して付いて来い」
「は、はい!」
宮田は、あわてて鞄にノートとペンを詰め込んで、さっさとエレベ
ーターホールに歩いていく関の後を追っかけた。
会社の玄関を出ると、そこには小型のトラックが二人を待っており、
そのトラックに乗りこむやいなや、関が「大急ぎで、大森3丁目の
後藤鉄工所まで!」と、運転手に告げた。
トラックは「グワーーン」といううなりをあげて出発した。
「ところで宮田。 お前は、差し押さえの 現場ってところ
に行ったことがあるか?」
「差し押さえの現場? ですか? いえ、ありません
が・・・」
< そんなもん。普通の学生上がりの人間にあるわけないやんけ
・・・ >
トラックは、品川を抜け、第三京浜を経由して約30分後、JR大森
駅の近くにある、とある工場の前で止まった。
次回に続く。
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