“動物園のようにワクワクする、みんなの炭酸飲料”がコンセプトだという「ZOOCE Sparkling フルーツパレード」。そこに隠された狙いを読み解く。
もう一つのチャレンジャーの戦い方の特長は、「セグメントが巧み」だということ。
リーダーのように全方位で戦う力はない。故に、勝てるところをみつけて確実にそこで勝っていくのだ。その意味からすると、今回の「ZOOCE」の「みんなの炭酸飲料」は少々合点がいかない。謎である。
悩んでも仕方がないので飲んでみた。サントリーホームページにある製品紹介では「りんごやオレンジ、パイナップル、バナナなどのフルーツフレーバーをバランスよくミックスし、様々なフルーツの味わいを想像しながら楽しめる、爽やかでやさしい味わい」とある。
確かに言われればフルーツジュース的なフレーバーが感じられなくもないが、さほど強烈な主張はない。うす甘く、ほんのりと酸味も感じられる味わい。炭酸は軽めだ。なぜだか懐かしい。
あ、と気付く。「これ、ラムネ味じゃねぇの?」。
「ラムネとサイダーの違い」。ググってみればわかるが、ネット上でも百家争鳴である。
諸説あるが、その出自や語源に言及はされているが、味に関する明確な定義は発見できなかった。故に、ZOOCEを炭酸カテゴリーの中で明確にラムネ味と定義できる論拠はないのだが、大事なのは「どこか懐かしく感じる味」であることだ。懐かしい感じが筆者にはラムネを想起させたのだ。理由は深く問い詰めないでいただきたい。
で、誰にとって懐かしいのかと言えば、「親世代」だ。かわいいパッケージに惹かれ、子供が「ズース、ズース」とせがむ。「子供に炭酸が飲めるか?」と思いつつ、購入する。最初に親が試しに飲んでみる。炭酸が弱いので、大丈夫と判断して子供に渡す。が、試し飲みの時点で、「懐かしい味」にしっかり親もハマる。子供がせがめばまた買ってやるだろうし、かわいいパッケージは母親なら、そのかわいさにもはまって自分買いもするだろう。
つまり、親子二面作戦だ。うーん、何という巧みな戦術。
消費者の購買に至る態度変容モデルはAIDMAが有名だが、AMTULというモデルもある。
Attention(注意)→Memory(記憶)と、ここまではAIDMAと同じ。続いてTrial(試用)→Usage(日常的使用)→Loyalty(ファン化)となる。
つまり、ZOOCEはAMTULのステップを狙ったものではないだろうか。
パッケージが目に止まる→記憶する→子供にねだられ試し買いする→親子ではまって買い続ける→ZOOCEファンになるという巧みな設計である。
チャレンジャーはリーダーの10倍アタマを使わなければ生きていけない。ましてや、新製品のうち生き残れるのは1000に3つといわれる飲料業界だ。サントリーのZOOCEには、深謀遠慮が感じられる。
ZOOCE、1000に3つを生き抜いてほしい。その力はあると分析した。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。