飲料業界に「飲む○○」が流行するようになったのはいつの頃からだろうか。最近では、「飲むプリン」、「飲むゼリー」などなど、やたら目にする。しかし、その歴史は意外と古いのだ。
「ブランドエクステンション」という。
すでに成功しているブランド名を使って、新カテゴリーに商品を上市する戦略だ。新たなブランドを一から創造するより格段に低コストで、新カテゴリーに進出を果たすことができる。しかし、その戦略が外れて失敗した場合には、同一ブランド名を持つ全ての商品への影響は免れない。
危険な賭のリスクを軽減するためか、「とろとろ桃のフルーニュ」では大規模な販促攻勢を行っていたのに対して、この「ティラミス・ラテ」はほとんど広告が見あたらなかった。ユーザーからの味の評価が定まるまで、ひっそりと展開しようということではないだろうか。幸いにも、その濃厚な味わいはうまくティラミスの味を再現していると筆者は思った。
恐らく、一定期間で販売を終了させ、若干、味を調整した後に、大々的なリニューアル販売を行うのだろう。
一方、「飲む○○」カテゴリーにビッグネームも帰ってきた。元の商品の名前を知らない人は恐らくほとんどいまい。そして、数多くの人が愛して止まない商品。ハウス食品の「フルーチェ」だ。
そのフルーチェを「飲む」にしつらえ直した野心作、「飲むフルーチェ」の最初のチャレンジは2002年頃だったか、2004年頃だったか。PET容器入りのヨーグルトテイストの飲料として上市した。フレーバーは確かにフルーチェの定番であるピーチとイチゴである。しかし、ユーザーの評価は厳しかった。フルーチェの価値の根源である「とろとろ・ぷるぷる感」のない、サラサラ飲料。フルーチェの名を冠しているものの、別物と言ってよい仕上がりと人々から評された。
リターンマッチである。「フルーチェ ハンディータイプ」。
森永製菓「ヴィーダーinゼリー」に代表されるような、10秒で飲める、アルミパウチ包装のゼリータイプに変身したフルーチェだ。同社ホームページでは「昨今の個食・即食需要の高まりに対応した、いつでもどこでもすぐにお召し上がりいただける、初めての1人用フルーチェ」としている。
「個食化対応なら、なんで、4人前が1パックに入っている、牛乳と混ぜる普通のフルーチェを1人用個包装にしないかな~」と根源的な疑問もわき起こるが、「どうしても外で飲みたい!」とするニーズを持ったユーザーの声があったのかもしれない。考えているだけでははじまらない。飲んでみた。イチゴ味・ブドウ味。
イチゴ味はかなり懐かしいフルーチェのフレーバーを再現している。問題の「とろとろ・ぷるぷる感」に関しては、厳密にいえば「とろとろ」は少し足りないものの、「ぷるぷる」に関しては、ナタデココまで投入してかなり頑張っている。正直言うと、フルーチェ特有の「ぷるぷる」というより、食感はゼリーっぽく、炭酸抜きの日本コカ・コーラ「ファンタ・ふるふるシェイカー」という感じもする。
しかし、「どうしても外で飲みたい!」「すぐ飲みたい!」とするユーザーニーズに応えようとする努力はひしひしと伝わってくる。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。