4月21日に『KDDI(au)の新ブランド「iida」。その先鋭的な狙いとは?』という携帯電話に関する記事を書いたばかりだけれど、その後、いくつか気になる報道を見つけた。 今回は、それらの情報をつなぎ合わせて、携帯電話ユーザーの動向について少し深掘りしてみたい。
■「安けりゃいいじゃん!」「新しくなくてもいいじゃん!」
販売奨励金を使った0円携帯が市場から一次姿を消したが、姿を変えて2007年頃から「ほぼ0円」が復活しはじめた。不景気の影響でさらに買い換えの長期化が顕著になり始めた昨年末に、投げ売り状態の「実質0円」が活発化したという。
<投げ売り激化で「0円携帯」復活も 携帯業界に市場拡大の打開策はあるか>
http://diamond.jp/feature/mobile_dw/10002/
実質0円で提供されるのは、人気がなく、在庫化している型落ちの機種だ。しかし、かつてなくそれがよく売れているという。もちろん、販売方式の変更による端末価格の高騰に不景気が重なった影響は大きい。しかし、それ以上に、新機種や高機能を求めるキモチがユーザーから急速に消失していっているのも大きな原因ではないだろうか。
さらに、中古携帯活況だという。
<不況の影響? 「中古」携帯電話が広がる>
http://www.j-cast.com/2009/04/15039410.html
中古品の買取・販売会社の広報担当者は語る。<「昨年(08年)の10月に中古携帯電話を取扱い始めてから、販売も買取も、毎月数百台単位で増加していますよ」>。
<機器が故障してしまった人や、とにかく安く機種変更をしたい人、短い利用期間で機種変更したい人>が店を訪れるという。
かつては携帯は自分自身の分身のような存在で、どんな機種を持っているかが重要だった。ちょうど、自動車がステータスシンボルであった時代のように。その自動車はステータスシンボルとしての機能をすっかり失った。携帯以上に乗り換えサイクルは長期化している。
携帯に対するユーザーの関心の低下は、自動車のそれを後追いしたような感がある。
■今後の携帯業界を占う「iida」?
「LIFE > PHONE」というコピーが印象的なauの新ブランド「iida」。2001年から脈々と続いたauのデザインプロジェクトを引き継いだ意欲的な展開である。
「機能競争は終わった」と小野寺社長が語るが、同社も各社同様に高機能路線は継続している。つまり、デザインやライフスタイルを訴求する「iida」と既存路線は二枚看板なのだ。
ここまで見てきたユーザーの動向から考えると、高機能路線は苦戦が予想される。しかし、auには、デザインプロジェクトの支持層という手堅い票田があるはずだ。その層が反応してくれるかどうか。そして、「iida」の魅力が伝わって新たなユーザーが取り込めるか。今後の動向を占う上では極めて重要なポイントだといえるだろう。
「iida」はデザインプロジェクトを引き継ぐ、auにしかできない独自のニッチャー戦略である。もし成功すれば、他のキャリアは、高機能路線から転換して、「自社ならではの価値」をどのようにユーザーに訴求していくのかを血眼で模索することになるだろう。
一方、「iida」が不発に終わったら。同時に高機能路線も縮小傾向が顕著だったら。その時は、機能を絞り込み、とにかく安くといった携帯ばかりになるのかもしれない。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。