グルインよりデプイン(1)

2007.07.19

仕事術

グルインよりデプイン(1)

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

グルインとはグループインタビューのこと。マーケティングリサーチで一般的に使われる手法です。が、筆者はグルインでは正確な調査は難しいと考え、一対一のデプスインタビューにこだわっています。

小学校高学年ぐらいから意見や推測と事実をきちんと見分ける教育が行なわれ、意見を述べるときには根拠を明確にしながら一定のロジックで推論を組立てるよう教えられます。そもそも英語自体が明快な論理構造を内包した言葉でもあるわけですが、そうした基礎教育を受けた上で、次はディベートを技術として学ぶ。だから、お互いの根拠や推論を確認しあい、その上で噛み合った議論を積み上げていくノウハウをある程度身につけている。

そして、ここが極めて重要なポイントなのですが、彼らにとって議論を戦わせることは一種の知的ゲームでもあり、いくら議論が白熱しても(ある程度の感情の高ぶりはあるとしても)、議論が終わった後まで感情的なしこりを引きずることはまずありません。だって、それはルール違反になるのだから。

ところが日本人が正面切って議論をすると、往々にして全人格が賭けられたりする。当然感情が全面的に持ち込まれ、もしも議論で破れるようなことになればそれは、それこそ人格の否定につながりかねないくらいの悲壮さが漂ったりします。議論を技術として教育されていないし、議論の前提となるロジカルな思考訓練も施されていないのだからから仕方がないことですね。

そこでグループインタビューの問題点が明らかになるわけです。つまり何人かのグループでいくつかのテーマについて意見を尋ねていくやり方では、日本の場合どうしても声の大きな人がずっとしゃべってしまいがち。司会者が質問を振っても、そういうボスっぽい人と違う考えをあえて積極的には言わないケースが多々あります。

その場のリーダーっぽい人の意見にあえて逆らってまで発言しなくとも、とりあえずうんうんと同意するようにうなずいていれば参加費はもらえるわけです。わざわざにらまれるようなことをあえて言ったり、場をしらけさせかねないような下手なことを積極的に発言するモチベーションはかなり低いと考えるべきでしょう。

これがアメリカなら、そもそもグルインに参加する時点でモチベーションの十分に高い人が集まってきていると考えていい。しかもそういう人たちは「人と違った意見を出してこそ自分が参加する価値がある」と考えている人が多いはずです。だから一つ一つのテーマについてさまざまな視点からの意見が出され、しかもみんな最終的にはアウフベーヘンへの期待も持っているわけだから意見が一つに収斂・昇華することが大いに期待できる。これがグループダイナミクスの基本的な考え方です。

もちろん、最近の日本人は以前ほど慎み深くないし、人前での発言をためらうこともなくなってはきているでしょう。しかし、少なくともいまの初等?高等教育あたりを見ている限りでは、クリティカルに考えたり、きちんとディベートをする訓練がなされているとは思えません。女子高生を集めてキャピキャピ言ってもらえばクライアントが喜ぶ、なんて特殊なケースを除いてはグルインをオススメできないのにはこういう理由があるのです。

では、なぜデプスインタビューが良いのか。続きは次回に。

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