ユーザー事業者数30万超。約90万種類もの商品を扱い間接資材のAmazonともいえる存在がMonotaRO、流通の仕組みが遅れた分野にネットで風穴を空けた革命児である。ただし革命には旧態勢力からの抵抗が付きもの。数々の試練に打ち勝ち、上場に到った同社の歩みを紹介する。
■不況時こそチャンス
「結局お客様にとっての我々の価値は何かといえば、まず時間なんです」
ネジやドライバーなどは従来通り出入りの工具商から買ってもいいし、自分でホームセンターまで買いに行っても構わない。しかし、買い物には時間がかかる。少人数で作業している現場では一人抜けただけでも生産効率は大きく下がるだろう。
「もう一つ、工具商さんと我々の決定的な違いは価格差ですね」
商品が同じなら価格はMonotaROの方が圧倒的に安い。当たり前の話である。工具商の立場からすれば、仮にドリルを一つ受注したとする。これを顧客の元に届けるには交通費も人件費もかけなければならない。それなりに利益率を高く設定しなければ、当然採算は合わないだろう。
「ところが我々は大量仕入れできるから、原価を抑えられる。通販だからお届けコストはかかるけれど、人が動くわけじゃないから安い。しかも価格は明瞭、どなたに買っていただいても価格は一律です。ネットで検索すれば欲しい商品はすぐに見つかり、注文ボタンをクリックしてもらえば次の日には手元に届く。便利でしょう」
時間面の利便性でもリアルなコストでも、MonotaROの優位性は揺るがないのだ。さらに同じ商品でも選択肢が多いのがMonotaROの魅力だ。工具商は余力がないため在庫を多く抱えることができない。各アイテムごとに在庫を持つのはナンバーワンブランドだけとなりがち。ここにもMonotaROの優位性が出てくる。
「たとえばノギスといえばミツトヨ、これが業界の常識なんです。ものすごく精密、だけれども1本1万円ぐらいする高級品です。そこに我々は中国産で1本2000円ぐらいのノギスをぶつけてみました」
起こったのは新たなマーケットの創出だった。高価なノギスだから1本を5人ぐらいで使い回ししていたのに、安価なノギスなら一人1本ずつ揃えることができる。そもそも1万円ノギスの精度はたいていの業務にはオーバースペックなのだ。
「典型的な『無消費層マーケティング』ですね。機能は限定されいているけれども極端に安い商品を提供すると、これまでなかった市場が生まれるわけです」
永年の商習慣にどっぷりと浸かり、旧態依然とした取引を続けていた工具商などからMonotaROは猛反発を受けた。新聞報道にも書かれていたが、さまざまな嫌がらせもあったはずだ。
「いろいろありましたが、我々はお客様のためにやっている。この軸がぶれない限り大丈夫です。実際、お客様はわかってくださっている。その証が売上ですよね」
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FMO第21弾【株式会社MonotaRO】
2009.03.17
2009.03.10
2009.03.03
2009.02.25