熾烈な飲料の戦いにおいて、いまいちマイナーな存在である「野菜ジュース」カテゴリーであるが、再び2つの商品が戦端を開いた。しかし、その狙いはカテゴリーのトップを目指すだけではなさそうだ。
もう一方で、さらにユニークな戦い方を挑もうとしているのが伊藤園だ。
野菜と果汁のミックスは従来路線だが、それに炭酸がブレンドされている。
「SPARKLING Vege(スパークリングベジ)」という新製品は3月12日、週明けの月曜日発売だ。
緑茶カテゴリーのトップブランドである「おーいお茶」を主力商品として持つ伊藤園には、伸長する炭酸飲料カテゴリーに目立ったブランドがない。そこで、もう一つの得意技である野菜ジュースのノウハウを活かして炭酸市場に攻め込もうという戦略だ。
しかし、その方向性は安易な選択ではない。ニュースリリースが、明快な同社の戦略を端的に伝えており、実に面白い。
http://www.itoen.co.jp/news/2009/031204.html
同社が目指したのは徹底した、「ターゲット発見」とターゲットの「ニーズギャップの解消」と「ニーズの掘り起こし」である。
<野菜飲料・炭酸飲料の両カテゴリーともに、既存製品の味わいに「飽き」を感じているユーザー>というターゲットを発見。
さらに、<炭酸飲料ユーザーの中でも「健康」を気にされるユーザー>というセグメントに対し、<野菜と果実を炭酸飲料にミックスするという新しい味わいを提案>というソリューションを提供することを考えたわけだ。
そして、<野菜を20種類、果実を3種類><野菜汁が20%、果汁が30%><350mlあたり60kcal>というスペックで実現したのである。
結果として、流行りの炭酸市場へ、ゼロカロリーではないが「低カロリーなサラリとした野菜系炭酸飲料」というユニークなポジショニングで切り込んでいくわけだ。
より本格的な「野菜加工食品」としてのポジジョニングを目指すカゴメ。「ユニークな炭酸飲料」としてのポジショニングを目指す伊藤園。
伊藤園の分析にもある通り、従来のちょっとドロッとしていて垢抜けない野菜飲料というドメインは、昨今のスッキリ流行からすると、大きな伸長は望めないだろう。だとすると、そのドメインを拡張して、「飲料ながら本格派」だったり、「野菜だけど炭酸」だったりする、ドメイン拡張を行うことは、方向性は異なるものの、正解かもしれない。
今回の野菜飲料戦争は、直接対決ではないものの、どちらが市場に受け入れられ、生き残るか。興味が尽きない。
まずは、週明けに伊藤園の「SPARKLING Vege(スパークリングベジ)」を試してみよう。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。