オフィスの効率的な利用や生産性向上を目的としてフリーアドレスが導入される例は、一次のブームは去ったものの、多くの事例が見られるようになった。しかし、成功事例の陰には効果が出なかった例も多く、悲喜こもごもの様相だ。そんな中で、コクヨがよりフリーアドレスの効果を発揮するソリューションを発売したという。そのソリューションをより強化する運用方法を考えてみたい。
確かに通常の部門・部署を離れ職階も取り混ぜたコミュニケーションは、思わぬ発想や発見があることは、いわゆる「タバコ部屋のコミュニケーション」として有名だ。しかし、それはアンオフィシャルな場だからこそであり、部門・部署・職階ごちゃ混ぜな座席を作って「さぁ、コミュニケーションをしなさい」といってもなかなか思った通りにはならないだろう。なんらかの「しくみ」がやはり必要なのだ。
一つは<業務内容に応じたコラボレーション>という点をもっと整備することが考えられる。部門を超えたプロジェクトなどに参画しているメンバーは、当然のことながら通常は近接した座席が割り当てられるべきだろう。
さらに、業務に直結したプロジェクトだけでなく、日常業務の改善など多くのテーマを社内プロジェクトとして立ち上げ、全社員が必ず何らかのプロジェクトに参画するようにする方法が考えられる。そうすることによって、プロジェクトメンバーは優先度の高い業務がある時以外は、近接した座席が割り当てられるようにして、自然と社内プロジェクトの話題が出るようになり、コミュニケーションが進む。
さらに、「しくみ」だけでなく「組織」をうまくからめることも考えられる。社内改善プロジェクトへのアサイン以外に、社員を習得すべきスキル毎の「学習組織」に参画させることだ。
業務上必要なスキル洗い出し、そのスキルをの高い社員を「リーダー」として、当該スキル習得が必要な社員を「学習グループ」にアサインする。リーダーは学習計画を策定し、必要なスキル教育をメンバーとなっている社員に展開する。リーダーはその実行レベルが、メンバーは修得度が評価に反映されるというしくみである。
この「組織」と「しくみ」を組み合わせた展開は、筆者もかつて会社員時代に実行し、効果を上げた方法である。
しかし、こうしたバーチャルな組織は、いかに定期的な集まりを開催できるかがキモなのだが、現状の組織においては目先の業務が優先されて、結局はなおざりにされてしまう。よほどリーダーや、そのしくみの運営者が強固な意志を持って継続しなければ続かない。
だが、今回のコクヨのソリューションのような「システム」をからめると、ぐっと現実的になる。リーダーやメンバーの業務繁閑に合わせて座席を近接させれば、スキル交換のためのコミュニケーションが促進されることになる。
ソリューションが機能するためには、と「システム」単体ではなく、「しくみ」と「組織」を整備し、同時展開することが必要だ。その意味で、コクヨの「座席割り当てシステム」は、生産性が低いと批判されがちな日本のホワイトカラーのワークスタイルを改善する「ソリューション」としての活用が期待できると考えられるのだ。
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2015.07.17
2009.10.31
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。