「モス史上最高!国産肉100%のうまさ」を豪語する、モスバーガーの「とびきりハンバーグサンド」が、暮れも押し迫った昨年12月27日に発売された。確かに美味い。が、その味以上にモスフードサービスが自社の戦略ポジションを活かした「巧い」商品戦略であることが覗える。
「ハンバーガーと言えば、やっぱりモスだよねぇ」とかつては固く信じていた筆者であるが、正直ここ数年、足が遠のいていた。「できたて」にこだわり、ファストフードではなく、むしろスローフードを目指すポリシー。二等立地にも足を運ばせるファンづくり。そんな本来の魅力が見えなくなった感じがしていたからだ。
高級路線を狙った「緑モス」への転換において、ファンとしてはどうにも中途半端に思えるメニューのラインナップが続き、さらに高級バーガーとして投入された「匠味」も原材料高騰のあおりを受けてか、ネット上でも多くのファンが指摘しているように味の低下も顕著だった。加えて、低迷脱却の次の一手として、櫻田厚社長が決算会見の席上で「200円前後の低価格メニューの開発を進めている」と発表は、筆者に「モスは終わった・・・」と失望に追い打ちをかけた。
が、モスは終わっていなかった!「とびきりハンバーグサンド」。その戦略が実に見事なのだ。
バンズに挟まれているのはパティと刻みキャベツだけ。ソースは王道のトマトデミソース。かなり直球勝負の気合いが感じられる。「バンズからお肉がはみ出している」とのコピーに偽りはなく、こんがり焦げて香ばしい香りを放つパティがしっかりその存在を主張している。90グラムとなかなかのボリュームだ。
もっと重要なのが、「ハンバーグに使用しているお肉は100%国産です」と明記していること。昨今の食の不安を払拭してくれるのがなんともうれしい。
それでいて390円という、かつての「匠味」のような高価格を打ち出していないのも良心的。肉は国産の牛・豚合い挽き。豚肉独特の風味がかなり感じられるので、豚の配合率は高そうだが、筆者の好みには合っている。「合い挽き」の選択は価格にも大きく反映されていると思われる。
同社のWebサイトにはこう記されている。
<本当に美味しいハンバーグを、手軽に食べてもらいたい。そんな気持ちでモスがたどり着いたのは、ハンバーグに使用するお肉を100%国産にする、というシンプルな答えでした。美味しいものに恵まれた国、日本に生まれてよかった!と思えるようなハンバーグ>
マクドナルドが挑発的に「ニッポンのハンバーガーよ、もう遊びは終わりだ」と、いかにも「本場米国から黒船上陸」といった演出をしたのに対し、「日本人の好みにあったハンバーガーを提供する」というモスバーガーの創業の理念に立ち返ったポジショニング。
そして、「100%国産肉」という要素は、マクドナルドだけでなく、ほかの多くのハンバーガーに対しても大きな差別化要因として機能する。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。