『フロー』心理学者の説く“仕事の楽しみ”

2007.06.28

仕事術

『フロー』心理学者の説く“仕事の楽しみ”

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

内発的動機は本人の内に無限のエネルギーを湧かせ、外発的動機は結局のところ本人や組織を消耗させてしまう。仕事で「フロー」を得るためには・・・

【ピンときた!コンセプト:PIN !-cept #04】======= やや長文です

今回触れるコンセプトは「フロー」です。
カネやモノの「フロー」(流通)ではなく、
心理学者、チクセントミハイが言及した幸福の心理状態である「フロー」です。

彼がそれを最初に世に広めた1975年の著書
『楽しむということ』(原題:“Beyond Boredom and Anxiety”)の
「第一章:楽しさと内発的動機づけ」は、次のように始まります。

「金銭、権力、名声、それに快楽の追求が支配的な社会にあって、
明確な理由もなく、これらすべてを犠牲にしている人々―――――
例えば、ロック・クライミングに生命を賭ける人々、芸術に生活を献げる人々、
チェスに精力を費やす人々など―――――
がいるということは驚くべきことである。
なぜ、彼らは楽しみの遂行という捉えどころのない経験を得るため、
物的報酬を自らすすんで放棄するのであろうか。・・・・」

チクセントミハイの著した要点は次のようなものです。

・人は行為そのものの中に見出した楽しさに動機づけられて行為する時、
人は自信、満足、他者との連帯を増加させる。
もしその行為が外からの圧力または報酬によって動機づけられるならば、
彼は不確実性、欲求不満、および疎外感を経験する。

・人がその行為の中に楽しみを見出し、その楽しみ自体がその行為の
最大の動機かつ報酬になっている場合を「自己目的的」と呼ぶ。

・そうした自己目的的活動に全人的に没入しているときに
人が感ずる包括的感覚を「フロー」と呼ぶ。

「フロー」の状態がいかなるものか、
チクセントミハイは自己目的的活動に没頭する人々のインタビューから
巧みな表現で書き表しています。例えば、

ロック・クライマー:
「自分の身のまわりに起こっていること、つまり岩や、手掛かりや、体の正しい位置を探り出す動きに浸りきってしまいます―――すっかり夢中になっているために、自分が自分であるという意識がなくなり、岩の中に溶け込んでしまうのです。・・・・ある意味ではほとんど自我のない状態になって、どういうものか、考えることなしに、また全く何もしていないのに、正しくことが運ばれる、とにかくそうなってしまうのです」。

ダンサー:
「(踊っている最中には)大きなくつろぎと静けさが私を包みます。失敗することなど考えません。それはとても力強く暖かい感じなのです。私は拡がっていって、世界を抱きしめたいんです。優雅で美しい何かを生み出す、巨大な力を感じます」。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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