好景気の終わりvs大恐慌の始まり

2008.12.27

仕事術

好景気の終わりvs大恐慌の始まり

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

来年をどんな年と考えるか。終わりの始まりという言葉をよく聞く。たとえば「ネットが普及した今はテレビ時代の終わりの始まり」といった使い方だ。では現状は何かの終わりの始まりなのか、それとも何かの始まりの終わりなのか。


本当に百年に一度(程度)の危機なのか

話をシンプルにするために、昨日(奇しくもキリスト降誕の日だ)読んだ日経だけに絞って見てみる。

1面
「いすず 全社員の賃金カット?三菱自、管理職報酬、削減へ」とある。これは異例の措置らしい。
2面:社説
「2008年の日本経済は戦後ほとんどなかったような激しい景気の急降下を経験した」という書き出しから始まる。そして「世界的な不況は09年にさらに悪化する恐れがある」と続く。恐れがどれぐらいの確率になっているのかを知りたいところだ。本当は「恐れがある」どころか「間違いなく」悪化するのではないのか。記事の書き方からは日経なりのポジショントークを感じる。
3面
「米政府 ノンバンクにも資本注入」である。カード社会のアメリカでは、みんながカードを使う。その支払いが滞っているのだ。だから結果的には国民の借金を国が面倒見てくれているということではないのか。そりゃ米国民とアメックスは喜ぶだろうけれど、そのためにアメリカ政府が抱えることになる借金は一体誰が肩代わりするのだろうか。
13面
「トヨタ系6社、下方修正」。当然だと思う。何しろトヨタが初の営業赤字に陥るのだから。それも1500億円もの巨額赤字である。注意すべきは営業赤字の数字そのものではない。その少し前の発表では減額修正とはいえ6000億円の黒字だったのだ。わずかな間に利益が7500億円(絶好調といわれるユニクロの年間<売上>でもまだ5800億円である)も吹っ飛んだことになる。影響は甚大だ。
15面
「非常時の発想でコスト減」とスズキの会長が取材に答えている。しかも鈴木会長は「今が底ではない。(米国発の津波の到来は)来年7?8月頃だと思う。これが今回の自動車不況の一番の底になるのではないか」と。鈴木会長の見立てでは、まだまだ景気は悪くなるということだ。

もちろん、良いニュースがないこともない。たとえばユニクロは絶好調で、今回の株価低迷をM&A絶好のチャンスとみている。任天堂も円高にも関わらず売上高2兆円に迫ろうという勢いだ。円高は原油をはじめとする資源輸入にはプラス、そのメリットを受ける企業もあるだろう。

「戦後最長景気の終わりの始まり」なのか
「史上初の恐慌の始まりの終わり」なのか

それでも、である。来年こそ米国発・世界恐慌が本格化する可能性は高い。いわゆるビッグ3で問題となっているのは、その生産性の低さである。だから、いくら国が金を突っ込んでも、ザルに水を注ぐようなものと非難される。何しろ諸々の手当まで含めれば労働者の時給ベースは平均70ドルにもなるらしい。早い話がビッグ3で働く人たちはみんな、相当な高給取りだということだ。

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