レストランやホテルなどの「サービス産業」では、 「人の採用」 が成功の鍵だとよく言われますね。 マナー・礼儀作法のような表層的な 「接客技術」 は教えることができます。
しかし、人が口には出さないけれど、
心の奥底で望んでいることを
ちょっとしたしぐさやことばから察して、
適切な対応が自然に取れる、
「おもてなし(ホスピタリティ)の心」
は教えることができないからです。
ニューヨークのレストラン業界で大成功している、
ユニオン・スクエア・ホスピタリティ・グループ(USHG)
のCEO、ダニー・マイヤー氏も上記の考えを持っています。
彼の自伝的著作、
『おもてなしの天才』
(ダニー・マイヤー著、ダイヤモンド社)
でマイヤー氏は次のように書いています。
“(レストランにおいて)高いクオリティを維持しながら、
温かいおもてなしをするために、情緒面と技能面の両方に
注意してスタッフを採用する。”
“理想的な候補者を100とすれば、技能面での優秀さが49%、
もてなしに必要な生来の情緒面の能力が51%となる。”
“従業員はとにかく51%の人々を採用しなければならない。
技術的な研修は容易であるが、情緒面の能力を教えて
修得させることはほぼ不可能だ。”
マイヤー氏は、自分のレストランが成功した理由は、
「サービス」と「ホスピタリティ」
の違いを理解したことにあると同書で書いています。
“サービスは「独り言」、ホスピタリティは「対話」である。”
“ お客様の側に立つというのは、お客様の言葉に耳を傾け、
五感すべてで気持ちをくみとり、思慮深く、礼儀正しく、
適切な対応をすることだ。”
“すばらしいサービスとホスピタリティのどちらもそろってこそ、
最高の店になれる”
私なりに言い換えると、
「サービス」
は技術的に提供可能なことに過ぎません。
さらに、情緒面の能力が必要とされる
「ホスピタリティ」
が伴わなければ、
最高の店にはなれないということでしょう。
考えてみれば、「サービス」は手厚いが、
「ホスピタリティ」
はかけらもないという店、たくさんありますね。
マイヤー氏の考え方は、
石川・和倉温泉の加賀屋のような人気旅館で体験できる、
日本人の繊細なおもてなしの根底に流れているものと、
実によく似ています。
勝手な決めつけかもしれませんが、
マイヤー氏は日本人以上に繊細なおもてなしの心を
持っている方だと感じました。
彼の考え方を
現場のすみずみまで浸透させたレストランが、
競争の激しいニューヨークで、
長年トップの座を維持しているのは当然の成果でしょうね。
同書は、
「サービスの本質」
を理解できるだけでなく、
マイヤー氏がレストランビジネスを立ち上げて
成功するまでの「リアルケース」を通じて、
「経営の本質」
を学べる経営書でもあります。
サービスやレストランに興味のある方だけでなく、
経営、リーダーシップ、人材マネジメントに
興味のある方にも一読をお勧めします。
『おもてなしの天才-ニューヨークの風雲児が実践する成功のレシピ』
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2015.07.17
2009.10.31
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。