おもてなしの天才

2008.11.14

ライフ・ソーシャル

おもてなしの天才

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

レストランやホテルなどの「サービス産業」では、 「人の採用」 が成功の鍵だとよく言われますね。 マナー・礼儀作法のような表層的な 「接客技術」 は教えることができます。

しかし、人が口には出さないけれど、
心の奥底で望んでいることを
ちょっとしたしぐさやことばから察して、
適切な対応が自然に取れる、

「おもてなし(ホスピタリティ)の心」

は教えることができないからです。

ニューヨークのレストラン業界で大成功している、

ユニオン・スクエア・ホスピタリティ・グループ(USHG)

のCEO、ダニー・マイヤー氏も上記の考えを持っています。

彼の自伝的著作、

『おもてなしの天才』
(ダニー・マイヤー著、ダイヤモンド社)

でマイヤー氏は次のように書いています。

“(レストランにおいて)高いクオリティを維持しながら、
 温かいおもてなしをするために、情緒面と技能面の両方に
 注意してスタッフを採用する。”

“理想的な候補者を100とすれば、技能面での優秀さが49%、
 もてなしに必要な生来の情緒面の能力が51%となる。”

“従業員はとにかく51%の人々を採用しなければならない。
 技術的な研修は容易であるが、情緒面の能力を教えて
 修得させることはほぼ不可能だ。”

マイヤー氏は、自分のレストランが成功した理由は、

「サービス」と「ホスピタリティ」

の違いを理解したことにあると同書で書いています。

“サービスは「独り言」、ホスピタリティは「対話」である。”

“ お客様の側に立つというのは、お客様の言葉に耳を傾け、
 五感すべてで気持ちをくみとり、思慮深く、礼儀正しく、
 適切な対応をすることだ。”

“すばらしいサービスとホスピタリティのどちらもそろってこそ、
 最高の店になれる”

私なりに言い換えると、

「サービス」

は技術的に提供可能なことに過ぎません。

さらに、情緒面の能力が必要とされる

「ホスピタリティ」

が伴わなければ、
最高の店にはなれないということでしょう。

考えてみれば、「サービス」は手厚いが、

「ホスピタリティ」

はかけらもないという店、たくさんありますね。

マイヤー氏の考え方は、
石川・和倉温泉の加賀屋のような人気旅館で体験できる、
日本人の繊細なおもてなしの根底に流れているものと、
実によく似ています。

勝手な決めつけかもしれませんが、
マイヤー氏は日本人以上に繊細なおもてなしの心を
持っている方だと感じました。

彼の考え方を
現場のすみずみまで浸透させたレストランが、
競争の激しいニューヨークで、
長年トップの座を維持しているのは当然の成果でしょうね。

同書は、

「サービスの本質」

を理解できるだけでなく、
マイヤー氏がレストランビジネスを立ち上げて
成功するまでの「リアルケース」を通じて、

「経営の本質」

を学べる経営書でもあります。

サービスやレストランに興味のある方だけでなく、
経営、リーダーシップ、人材マネジメントに
興味のある方にも一読をお勧めします。

『おもてなしの天才-ニューヨークの風雲児が実践する成功のレシピ』
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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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