東芝が自社サイトでの直販に続き、楽天市場にも出店をした。この意味するものは何だろうか。
では、量販店の天下はいつまで続くのか。
家電量販店トップのヤマダ電機は売上高1兆1千億円を超えている。主要10社の売上規模は日本のGDPの10%以上を超える約56兆円にも上る。全国の主要駅前一等地にも次々と家電量販店の大型店が出店している。
しかし、その勢いにもかげりが見えてきた。
<家電量販大手4社、消費不振で最終損益悪化 4―6月>
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080808AT1D0808J08082008.html
9月のサブプライムショック以降、一段と店頭から客足が遠のいているともいう。
チャネルコンフリクトは回避したい。しかし、チャネルと心中はしたくない。これはメーカーの永遠のテーマでもある。あるアパレルメーカーは、百貨店への配慮から、ショッピングモールなどへの直販店展開に躊躇し、如実に購入客数の低下を招いている。低迷する百貨店と緩やかな心中という方向が見えてくる。
東芝は特に低価格ノート市場へ積極参入している。「NB100」である。しかし、その市場は明らかに低価格でとにかく市場のシェアを取り合うペネトレーション・プライシングの戦いに突入している。大手デルの参入。さらに値下げ戦略に対抗するため、「NB100」も発売早々2万円近く値下げを余儀なくされた。ペネトレーションの要諦はとにかく数を売ること。売って売って、規模の経済や経験効果を発揮して、生産原価を下げ利益創出するしかないのだ。
メーカーがネット直販を行う場合、チャネルコンフリクトを回避するために、「ネット専用モデル」から展開する。そして、順次、チャネルに対する配慮をしながら取扱商品を拡大していくのが普通である。
しかし、最終的に自社直販サイトが充実しても集客数には限界がある。そこで、大手ECサイトへの進出という選択肢が持ち上がってくる。自社直販サイトでの展開と、大手ECサイトへの進出では意味合いが大きく異なる。量販店の立場からすれば、明らかに競合となる存在だからだ。
チャネルコンフリクトの懸念を抱えてまで楽天に出店した東芝。まだ、ネット限定モデルでの展開だが、早晩ラインナップの充実も図るだろう。楽天への出店。それは、東芝が家電量販店の失速を見て、やがて凋落した場合に備えた「保険」なのではないかとも考えられるのである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。