サラリーパーソン、特に大企業勤めや公務員は「守られた働き人」です。守られるがゆえに“鈍化病”を発症します。その三大症例を寓話を交えて紹介しましょう。
しかし、人間というものは、環境の恩恵を活かすこともあれば、
恩恵に甘えて怠けることもします。
「貧すれば鈍する」とは昔から言いますが、
同じように、サラリーマンにおいて、
「安すれば鈍する」ことが起きると私は観察しています。
つまり、安心・安穏とした守られた状態に身を置き続けるうちに、
働く意識がいろいろと鈍ってくるという症状です。
私はこれを「サラリーマンの鈍化病」と呼んでいます。
あるいは「キャリアの平和ボケ」といっていいかもしれません。
きょうは、その鈍化病のうち3つを寓話を交えて紹介したいと思います。
サラリーマン諸氏にとっては、多少、耳の痛い内容かもしれませんが、
寓話の紹介だと思って、気楽に読み流してください。
私が感じる「3つの鈍」とは、
1)変化に鈍くなる
2)超えることに鈍くなる
3)リスクを取ることに鈍くなる です。
●鈍化病1【変化に鈍くなる】 “ゆでガエル”の話
生きたカエルを熱いお湯の入った器に入れると、
当然、カエルはびっくりして器から飛び出てくる。
ところが今度は、最初から器に水とカエルを一緒に入れておき、
その器をゆっくりゆっくり底から熱していく。
・・・すると不思議なことに、カエルは器から出ることなく、
やがてお湯と一緒にゆだって死んでしまう。
この話は、人は急激な変化に対しては、びっくりして何か反応しようとするが、
長い時間をかけてゆっくりやってくる変化に対しては鈍感になり、
やがてその変化の中で押し流され、埋没していくという教訓である。
窓際族とかリストラ組とか、それは嫌な言葉ではあります。
私はいま、会社(雇用組織)とも、そこで働く従業員ともニュートラルな立場で
人財教育サービスを行う身ですので、客観的に物事が見られるわけですが、
窓際やリストラを生む原因は、会社にもありますし、働く個人側にもあります。
しかし、根本的には、働く個人が、働く意識を常に鋭敏にさせて
自己防衛・自己発展させていくしか、この手の問題の解決はないと思っています。
だから、私は、
「サラリーマンよ、ニブ(鈍)リーマンになるな。
環境の変化を感じつつ、変えない自分の軸を持って、自分を変えていけ」
と勇気づけるしかない。
ゆでガエルは、保守・安穏・怠惰・安住の行く末の象徴として
肝に銘じておきたい話だと思います。
*
拙著『ピカソのキャリア ゆでガエルのキャリア』は、
この話をモチーフにして書き上げました。
●鈍化病2【超えることに鈍くなる】 “ノミの天井”の話
ノミの体長はわずか数ミリだが、体長の何十倍もの高さを跳ぶことができる。
ビーカーにノミを入れておくと、当初、
ほとんどはビーカーの口から元気よく跳び出ていってしまう。
しかし、ビーカーにガラス板でふたをしておくとどうなるか。
ノミは何度もガラスの天井板にぶつかって落ちてくる。
これをしばらく続けた後、ガラス板をはずしてみる。
すると、ノミは天井だった高さ以上に跳ばなくなっており、
ビーカーの外に跳び出ることはない。
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2008.12.15
2010.03.20
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。