「お好み焼きソース」は当然、お好み焼きが食べられなければ消費されない。メーカーの売上げはお好み焼きそのものの需要に左右されることになる。徹底した集中化で需要拡大を図るオタフクソースの戦略を見てみたい。
筆者を含む関東人のお好み焼き摂取頻度はかなり低い。また、そこにかけるソースに対するこだわりも非常に希薄で、平気でとんかつソースをかけて食べたりしてしまうのだ。
関西方面や広島方面に人から言わせると、アンビリーバボー!な行動だそうだ。
あるとき勧められるままに、「オタフクソース」を使って食べてみた。・・・うまい。「今まで他のソースを使って食べとったワイは、なんちゅうアホやったんや!」と言葉まで怪しくなるくらい衝撃的に世界が変わった。以来、ソースは同社の製品がお気に入りだ。
しかし、調べてみるとオタフクソースの商品ラインアップは驚くほどソース一本だ。
多少、酢やサプリなども製造しているが、ほとんどがソース。それもメインはお好みソースなのだ。恐ろしいまでのニッチャーである。しかし、ソース業界ではブルドックソースと戦う第二位のソースメーカーなのだ。
マイケル・ポーターのフレームワークで考えれば、リーダーに戦いを挑む「差別化戦略」をとっているといえるが、一方で徹底的にお好み焼きにこだわる「集中戦略」という戦い方であると解釈した方がいいのかもしれない。なぜなら、同社の戦略は徹底した「需要増大策」を取っているからだ。集中戦略の要諦は、特定のセグメントに特化して強みを発揮しつつ、そのセグメントを拡大していくことだからだ。
同社のお好み焼き普及・拡大策の努力は徹底している。まずは個人宅のお好み焼き需要の拡大よりも、量がさばける飲食店を増やす方が手っ取り早い。そのために、お好み焼き店開業予定のプロを養成する「お好み焼研修センター」を全国7箇所に設け、年間約300人が受講しているという。
その運営を担うのが営業本部マーケティング部に属するその名も「お好み焼課」だ。同課の活動はプロ養成に留まらず、家庭での需要促進も図るため「お好み焼教室」を開催し、ホットプレートで作るおいしい作り方を教えるという。
そして自社社員のお好み焼きに対する知識・技術錬成にも力を入れている。2006年から社内資格「お好み焼士」マイスター制度も導入した。
弛まぬ需要拡大の努力をしている同社であるが、昨今の外部環境が凄まじい逆風となって襲ってきている。肝心の「粉」の原料高は需要の低下をもたらすことになる。集中戦略の弱みは、集中したセグメント自体が縮小すると大きなダメージを受けることになることになるのだ。
マーケットの縮小に手をこまねいていては事態の打開はできない。そうしたときには、マーケットのセグメントをもっと細分化して、成長や拡大の可能性があるところを見つけ出すことが肝要だ。まさに、同社はその展開を行った。
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2008.11.11
2009.07.30
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。