「月末になると、原油価格が気になって仕方がないですわ」。四国で外食チェーンを経営するオーナー社長さんの言葉だ。東京にいては実感しづらいが、地方はいま悲惨な状況となっているのだ。
そんなアホな、ガソリン代が高くて困るんだったらクルマなんか乗らなきゃいいじゃんと言うなかれ。四国では実質的な移動手段がクルマしかないのだから。JRがあるではないかと言われれば、確かにその通り。1時間に2本ぐらいは走っている。国道など幹線道路ならバスがカバーしている。こちらも平均すると1時間に1本あるかどうかといったレベルだけれど。
だから、まともな勤め人であればクルマか、最低でも原チャがないと話にならない。そのため一人一台が当たり前、つまり一家に2?3台のクルマを抱えている地方では、ガソリン代の値上がりはダブルパンチ、トリプルパンチとなり相当大きな負担増である。
公共事業のダメージは地方に
バラマキが良くないのは重々承知している。日本の国家財政は火の車である、もはや公共事業を景気対策に使っている場合ではないのは自明の理とさえいっていい。しかし、公共事業打ち切りのダメージは、都市よりも圧倒的に地方に強く及ぶ。なぜなら都市には、ぜいたくさえ言わなければ働き口がまだいくらかはあるから。
これが地方になると、本当に仕事がない。仕事がなければ収入もない。収入がなければ、使えるお金はない。お金がなければ、消費者は家に閉じこもるしかない。消費が停滞し、地方の景気はさらに悪化する。完全な負のサイクルである。
その結果「この夏の地域で出される景況報告などでは、消費者の動きについて『車通勤をバスに』『弁当持参』『パンから米へ。米は等級を落として』といったコメントが見聞される(日経MJ新聞2008年9月8日付3面)」までになった。決して異国のことではない。東京と同じ日本の話である。
東京と地方の落差
もちろん景気が悪化傾向にあるのは地方だけではない。景況感は日本全体で悪化している。しかし、都市部それも東京ではまだ、地方ほどのダメージは誰も感じていないはずだ。
推測するにビジョナリーの皆さんも、あるいはInsightNowの読者の皆さんも、東京近辺にお住まいの方が多いだろう。東京感覚で日本全体を捉えていると、もしかするととんでもない読み間違いをしてしまう恐れがあるんじゃないか、と奈良在住の筆者は思った次第。
奈良も決して状況は良くない。遷都1300年という百年に一度の記念すべきイベントを控えているのに、予定されていた大型ホテル2軒の建築計画がおじゃんになったぐらいだ。せっかく観光客を招くチャンスをみすみす逃すのだ。これは東京発のデベロッパー不況の影響をもろに受けてのこと。すでに日本の景気は相当に悪いと、腹を括るべきなのかもしれない。
そして今は少し沈静化しているけれども、この先ふたたび原油(=ガソリン)価格が上がっていった時、その被害はクルマ以外の移動手段を原則として持たない地方に、より強烈に出る。そのことも考えておくべきだと思った。
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