液晶分子に電圧をかけ液晶分子の向きを変え、外光の透過性を調節して画像を描く電子ペーパー。電力がなくても、次に電圧をかけるまで画像を半永久的にを維持することができるため、超低消費電力・薄い・軽い・明るいを実現した。 その電子ペーパーがこの秋、情報端末として商品化される。
通勤電車で新聞は幾重にも折り曲げて、周囲の人の迷惑にならないように遠慮がちに読む。雑誌は混雑時間は諦める。スペースを取らないので、優先席付近でなければ携帯電話で何かを見ていることが多い。そんな中で、<厚さは約1センチメートル>ながら、A4サイズは広げられないだろう。上記Webのリンク先には画像がないのだが、新聞紙面で紹介された端末はA4サイズそのままという風情で、いかにも大きい。
電子ペーパーは丸めたり、折り曲げたりできるのが大きな利点なので、せめて以下のような製品にできなかったのかと思ってしまう。
Philips傘下のPolymer Vision社が2008年2月にMobile World Congress 2008で発表した試作品だ。
<新聞を読めて音楽も聴ける“現代の巻物”――巻き取り式電子ペーパーケータイ「READiUS」>
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0802/15/news053.html
しかし、そもそも日本においては「読む」ことを目的とした端末はあまり普及する土壌がないように思われる。今年から来年にかけて、電子ブックで先鞭をつけた松下とソニーが撤退することが決まっている。
<電子書籍端末売れず──ソニーと松下が事実上撤退>
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0807/01/news122.html
米国においてはAmazonが昨年から販売した電子書籍端末”Kindle”が大人気だ。しかし、日本においては携帯電話でのコンテンツ閲覧が主流となっているため、電子ブックはなかなか普及の芽が出ない。前出の松下もソニーも、結局はコンテンツの配信・販売は携帯電話向けで存続することになっている。
電子ペーパーの超低消費電力(バッテリー長持ち)・薄い・軽い・明るいという特徴を「読む」という機能の端末に応用した場合、携帯電話に対して優位性を発揮できるのだろうか。
市場にイノベーションが受け入れられる要件をまとめた、E.M.ロジャースの「イノベーション普及要件」に照らし合わせて考えてみよう。
1.相対優位性…今まで使っていたものと比べ、いかに優れているかが分かりやすいこと。
2.両立性…当面は今まで使っていたものを捨てることなく、両立できること。
3.複雑性…理解できないほどの複雑性を持っていないこと。逆に当たり前に見えすぎない程度に複雑であること。そのバランス。
4.試行可能性…とりあえず、本格的な導入の前にプロトタイプやデモなどで効果を認識できること。自ら触ってみることができること。
5.観察可能性…目に見えない効果ではなく、明らかに効率が上がるもしくは質が向上するなどの効果が観察・実感できること。
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2008.08.29
2013.05.30
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。